2019年 9月 21日 (土)

知られざる地方の政治・行政

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30年変わらない課題もある

   一口に都道府県と言っても、人口が1350万人を超える東京都から57万人の鳥取県まで多様だ。市町村に至っては、横浜市が370万を数えるのに対し、東京都の青ヶ島村は178人と差は2万倍を超える。

   著者によれば、日本の地方政府は多様性が大きいにも関わらず、画一的な制度で対応してきたことが特徴だという。

   具体的には、(1)都道府県と市町村という二層制が維持されてきた、(2)規模が違っても首長と議会の仕組みは同一、権限や財源もほぼ同じとされている、(3)地方政府間で生じる格差は中央政府からの財政移転(地方交付税)一本で対応されてきたことだ。

   著者は、「これ(画一的な制度)がどこまで維持できるのか」と述べ、今後、地方政府の多様性を踏まえた改革が必要になってくると予測している。

   本書では、長年変わらずに維持されている制度のうち、実態との間に乖離や不都合が生じている仕組みを取り上げているが、評者自身、あまり意識せずにいたことがいくつもあった。

(1) 大都市制度の不在

   本書では「人の移動」に着目し、現在の地方政府の仕組みが対応できていないことを指摘している。

   人は、生まれ育った市町村から進学や就職のために転居したり、最近では子育て(保育所の確保)のために引っ越す事例すら生じている。人口減少が進みつつある現在でも年間500万人が引っ越しているというのだ。

   また、都市部では自宅と勤務地や通学地が異なる場合も多い。このため3大都市圏などでは、中心地の昼間人口が夜間人口を大きく上回るところも生じている。昼間人口の多い自治体では、住民税収入が得られないまま、追加的な行政サービスの提供が求められることになるが、現在の地方制度では、東京23区を除き、こうした負担調整を行う仕組みは存在しない。

   この大都市問題を提起したのが大阪都構想であり、2015年の住民投票で1度否決されたが、今年の統一地方選挙において大阪維新の会が勝利したことにより再び機運が盛り上がりつつある。この新たな都構想は、議会と住民投票の両方で過半数を得る必要があり、ハードルは高いが、著者は改革の必要性を認める立場から、期待感をにじませつつ、以下のように語っている。

「大都市における基礎自治体のあり方と、都市間競争に置かれる都市の経営をどのような形で担っていくのか、それを国任せではなく地方政府と住民の手で、どのように実現していくのかが問われている」

(2) 政党制になじまない地方の選挙制度

   今年の統一地方選挙でも目立ったように、首長選挙の場合、自治体全域から幅広い支持を得る必要があることから、「相乗り」や「無党派」が多い。国政選挙と異なり、首長自身、政党色が薄い方が選挙対策上有利とすら言える。

   地方議員の選挙でも、理由は異なるものの政党化は進んでいない。特に市町村議会では、自治体全域から全議員が選ばれる大選挙区制が基本であることから、新規参入が容易であり、候補者は政党に所属するインセンティブが乏しい。

   本書では、西宮市議会の事例が取り上げられているが、41人もの議員が市全域から選ばれることから、1800票ほどで当選できる。政党として戦略的に対応している公明党や共産党は、票を候補者ごとに分散することで効率的に当選者を確保しているが、支持基盤が明確ではない自民党や維新の会は、票の分散といった戦略はとりづらく、特定の候補者が過大な票を獲得する一方で「死票」を生じさせている。

   政党制があまり機能しない地方議会にあっては、結果として、多数派が形成されず行政のチェック機能が発揮できなかったり、議員が個別利益を追求する状況を生むことにつながっているという。過去40年の都道府県議会の議員提出の条例案は年間平均1.27本、議員報酬などの議会運営関係を除く政策的な条例案に限ってみれば何と0.17本にとどまるというのだ。

   著者は、地方分権改革が進んだ今日においてこそ、地方議会の政党制を確立することが首長と議会の関係を健全化するためにも必要だと指摘している。そのためには、議員定数や選挙区制のあり方など、選挙制度の在り方が問われることにもなろう。

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