2021年 9月 27日 (月)

25年越しの宿願 松重豊さんは撮影で訪れたそのホテルで...すっきりした

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文字が持つチカラ

   この作品を読んだ私はまず、東京23区の地図を開き、新宿区北部にあるはずの「外資系高級ホテル」「25年前には聞いたことも無い名前のホテル」を確認した。なるほど。

   役者として売れる前に味わった屈辱。いつの日にかその始末をつけたい、と念じていた松重さんである。当然ながら、あの現場監督に向かうべき恨みであり、宿泊施設としてのホテルとはなんの関りもない。だが監督は今どこで何をしているか分からず、でっかい憤怒の落としどころとして、彼の自宅を突き止めることもかなわない。

   他方、A地点とB地点の間を一往復半した恨みの砂は、ホテルの基礎構造のどこかに使われているのである。松重さんの解決法は「それ」しかなかった。冒頭の「優雅に混み合っていた」という描写に、私は歪んだ怒りと、宿願成就が近い解放感を見て取った。

   もちろん、黒い目的のために自腹で宿泊するのは馬鹿らしい。くだんのホテルが撮影現場となったことで、ついにその時が巡ってきたわけだ。タイトルに「オムレツはトイレのあとで」とあるように、まずは「仕事」である。

   客室で水に流した積年の恨みは、こうして主要誌で公にすることでサッパリ昇華したに違いない。文字が持つ癒しのひとつだと思う。おめでとうございます。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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