2024年 4月 25日 (木)

アトランタで奇跡、東京は? 前園真聖が語る五輪サッカー(後編)【特集・目指せ!東京2020】

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   前回のインタビューで前園氏は、自身が出場した1996年のアトランタ五輪を振り返った。

   後編となる今回は、2020年の東京五輪に出場するサッカー日本代表(23歳以下)について、期待する選手、さらにはサッカー界に向けた「提言」を話してもらった。(インタビュアー・石井紘人 @ targma_fbrj)

  • 前園氏が東京五輪で期待する選手を挙げた
    前園氏が東京五輪で期待する選手を挙げた
  • 「代わりは今の日本にはいません」と前園氏が絶賛する大迫勇也選手(2018年6月撮影)
    「代わりは今の日本にはいません」と前園氏が絶賛する大迫勇也選手(2018年6月撮影)
  • 前園氏が東京五輪で期待する選手を挙げた
  • 「代わりは今の日本にはいません」と前園氏が絶賛する大迫勇也選手(2018年6月撮影)

自国開催の東京五輪は勝ちに行く

――東京五輪はサッカー界にとって、どのような大会になるでしょうか。

前園 凄く重要な大会になると思います。というのも、サッカーの場合、五輪の二年後にFIFAワールドカップ(W杯)が行われます。東京五輪でメダルをとって自信を付けられれば、そのまま(2022年の)カタールW杯に繋げられます。
森保一監督は日本代表の監督も兼任していますし、チーム戦術も洗練させていくことが出来る。監督が五輪と日本代表を兼任するのは、2002年の日韓W杯以来です。あの時はグループリーグの壁を打ち破って歴史を変えました。東京五輪では、それ以上の相乗効果を見せてくれるはずです。

――では、東京五輪で日本はどこまで勝ち進めますか。

前園 組み合わせにもよりますけど、ベスト4くらいは目指して欲しい。今回ほど五輪世代が(レベルの高い)海外でプレーしていたことはありません。さらに、DFの富安健洋とFWの堂安律は日本代表の主軸としても、海外の所属チームでもバリバリに活躍しています。久保建英もそうです。
過去の五輪代表は、育成に重きを置いていた所もありますよね。でも、今回は自国開催ということで勝ちに行くはずです。

――確かに前回のリオ五輪時に、日本サッカー協会は「五輪の監督には次のW杯への育成を求めている」といったニュアンスの話をしていました。前園さんのご指摘のように、今回は今までにない日本が見られるかもしれません。

前園 オーバーエイジも監督のオーダー通りになるでしょうし、今までとは違ったチームが見られるはずです。

オーバーエイジは大迫勇也を入れて欲しい

――では、東京五輪で注目している選手を教えてください。

前園 堂安、久保はもちろんですが、食野亮太郎。それから、まだ十代と若いですが中村敬斗も面白いですね。でも一番は、オーバーエイジですが大迫勇也を入れて欲しい。大迫の代わりは今の日本にはいません。あとは、経験のある選手は縦のラインにいるとチームに落ち着きを与えるので、柴崎岳。ディフェンスに、五輪経験も豊富な吉田麻也もよいかもしれません。

――テレビやスポーツ紙は中島翔哉、南野拓実、堂安を「新BIG3」「NMDトリオ」「三銃士」と大々的に報じていますが、前園さんは大迫を押されています。大迫の「半端ないところ」を専門用語なく教えて頂けますか。

前園 まずは、色々な形から点が取れることです。両足で蹴れますし、W杯ではヘディングでゴールも決めています。ゴール前で得点を取るだけでなく、周りも上手く使えます。中島、南野、堂安といった二列目の選手が活躍し、フィーチャーされているのは、大迫がいるからです。得点を取りながらも、巧みに二列目の選手たちを活躍させているのです。

日本人選手の海外移籍「ヒデが切り開いた」

――最後にサッカー界の難しい質問をさせて下さい。現在、多くの20歳前後の選手たちが海外に移籍しています。ですが、若くして海外移籍した選手が順調に伸びた例は少ない。たとえば、森本貴幸や宮市亮が挙げられます。一方で、五輪を経験してから移籍した岡崎慎司、長友佑都、本田圭佑は日本代表で順調なキャリアを過ごしました。適切な海外移籍のタイミングは何歳くらいだと思いますか。

前園 凄く難しいです。確かに今までは、ある程度Jリーグで経験を積み、五輪で世界を体感して、そこから自分に合ったレベルのリーグを目指すモデルが主流でした。でも、欧州三大リーグ(イングランド・スペイン・イタリア)で戦うのであれば、それは遅いという考え方もできます。欧州では、24歳はもう中堅になってしまっている......。
今の移籍って、やはりヒデ(中田英寿)が切り開いた部分があると思います。その前に欧州移籍した選手は、ヒデほどのインパクトを残せたとは言い難いですよね。成功のモデルがいなかったから、日本サッカーは海外移籍のノウハウをもてなかった。それは僕自身が痛感しています。それをヒデが変えた。Jリーグで経験を積んで、日本代表として世界を経験して、欧州に移籍していく。そんなヒデのモデルケースが、長友や岡崎や本田ですよね。そして、欧州クラブ側も「ネクストヒデ」を探せと、日本人を積極的に獲得している。
ヒデが前例を塗り替えたように、たとえばスペインにいる久保が成功すれば、「前例」が(イタリアで苦戦した)森本から久保に代わり、十代で欧州三大リーグでも普通にプレー出来るようになるのだと思います。
そういった意味でも、今回の五輪世代は、日本サッカーの歴史を変えてくれそうだと期待が膨らんでいます。

(文中敬称略)


前園真聖(Masakiyo Maezono)
1992年鹿児島実業高校からJリーグ・横浜フリューゲルスに入団。 1994年にはアトランタオリンピックを目指すU-21日本代表に選出されると共に、ファルカン監督に見出されA代表にも選出。日本代表U-21主将として28年ぶりとなるオリンピック出場に貢献。
そして1996年、アトランタオリンピック本大会では、ブラジルを破る「マイアミの奇跡」などを演出し、サッカーファンのみならず、広く注目される事となる。
その後、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ1969)、サントスFC・ゴイアスEC(ブラジル)、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ、安養LGチータース・仁川ユナイテッド(韓国)と渡り歩き、2005年5月19日に引退を表明。
2006年FIFAワールドカップドイツ大会、2008年北京オリンピックともに期間中は現地にて取材活動をし、サッカーだけではなく多岐にわたる競技を取材する。現在はサッカー解説者やメディア出演の他に、自身のZONOサッカースクール少年サッカーを主催し、普及活動をしているが、2009年ラモス監督率いるビーチサッカー日本代表に召集され現役復帰。同年11月に開催されたUAEドバイでのW杯において、チームのベスト8に貢献した。ペットはミニ豚。

文:石井紘人(いしい・はやと)
ラジオやテレビでスポーツ解説を行う。主に運動生理学の批評を専門とする。
著作に『足指をまげるだけで腰痛は治る』(ぴあ)『足ゆび力』(ガイドワークス)、プロデュース作品に久保竜彦が出演した『弾丸シュートを蹴る方法』(JVD)がある。
『TokyoNHK2020』サイトでも一年間に渡り、パラリンピックスポーツの取材を行い、「静寂から熱狂そしてリスペクト」などを寄稿。
株式会社ダブルインフィニティ代表取締役でもあり、JFA協力、Jリーグと制作した『審判』の版元でもある。

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