2020年 1月 27日 (月)

「現場」の問題意識を学問・実務に生かす難しさ

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■『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(著・ブレイディみかこ 新潮社)
■『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学』(著・ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大 亜紀書房)

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   今年の「本屋大賞ノンフィクション本大賞」、「毎日出版文化賞特別賞」、「八重洲本大賞」「ブクログ大賞エッセイ・ノンフィクション部門」の4つの賞を受賞した注目の1冊が、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』だ。本書は、新潮社の「波」の2018年1月号から2019年4月号に掲載されたのが初出になる。

   11月17日放映のNHKおはよう日本「けさのクローズアップ」で、これまでテレビ出演を一切断ってきた著者のブレイディみかこ氏が、受賞を機に初めてインタビューに応じ、作品に込めた思いを語ったことも注目された。

   このインタビューによれば、「波」での連載にあたり、編集者から「今の現場を書いてください」と言われたことがきっかけで、「もしかしたら今の現場は、自分自身の子どもを育てることというか、育児、息子のことになるかな」と思って書き始めたという。

   著者のとても親しみやすく読みやすい語り口は、まさに「現場」にぴったりだ。評者も引き込まれてあっという間に読了することができた。

子どもが直面する諸問題に目を向けさせてくれた

   子どもは、異なる文化の間、現実と想像の世界の間など、さまざまな境界を自由に行き来する性質を持つという。著者は、母親として得た、元底辺中学校に通う、白人男性との間に生まれた男の子の視点を示しつつ、英国・ブライトンでの日常社会を生き生きと語り、子どもが直面する政治・家族・文化的な諸問題に、我々の目を向けさせてくれた。

   最近の日本の風潮からすると、第4章「スクール・ポリティクス」で、著者が学校のポリシーが、最近は右寄りとみられがちな「プリティッシュ・ヴァリュー」とされていることを学校長に問うシーンが印象的だ。校長は、「僕はイングリッシュで、ブリティシュで、ヨーロピアンです。複数のアイデンティティを持っています。どれか一つということではない・・」と答える。ブレイディ氏は、「どれか1つを選べとか、そのうちのどれを名乗ったかでやたら揉めたりする世の中になってきたのは確かである」と思い、「分断とは、そのどれか一つを他者の身にまとわせ、自分の方が上にいるのだと思えるアイデンティティを選んで身にまとうときに起こるものなのかもしれない」という。

   著者は、英国で当時久方ぶりに保守党から2001年に政権交代をもたらした、トニー・ブレアを首班とする労働党の政策運営にとても批判的だ。このアイデンティティの問題についても、ブレアの言葉「いまや英国人はみなミドルクラスだ」を引いて、「貧困や格差、労働問題といった階級政治の軸がすっかり忘れられてしまった」と非難する。これからの時代は、「アイデンティティよりイデオロギー(階級闘争)」へ、ということだと思う。

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