2020年 11月 30日 (月)

「現場」の問題意識を学問・実務に生かす難しさ

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著者が指摘・議論すべきだったこと

   このブレイディみかこ氏が著者の1人である『そろそろ左派は<経済>を語ろう レフト3.0の政治経済学』は、2018年5月に出版された話題作である。帯にある「日本のリベラル・左派の躓きの石は『経済』という下部構造の忘却にあった! アイデンティティ政治を超えて、『経済にデモクラシーを』求めよう」という問題認識・問題提起には大いに共感する。

   しかし、著者がこの本で強力に押していた労働党左派のジェレミー・コービンを党首とする労働党は、先日の英国総選挙で、歴史的大敗を喫した。労働党は総選挙で、英国の国民保健サービスNHSの支出拡大や、ブロードバンド網の無料提供などの「バラマキ」を主張したという。

   労働党がはじめて単独で政権をとって、英国における「ゆりかごから墓場まで」といわれた福祉国家をつくりあげるきっかけとなったのが、1945年のアトリー政権であるが、著者たちは、コービン党首の、この原初(1945年)への立ち返りを高く評価していた。

   しかし、そのような福祉国家のコンセンサスの崩壊を象徴する「不満の冬」(1978年から1979年にかけての英国の冬で、インフレーションを防ぐために労働党政権でとられようとした政策に反対した大規模ストライキで社会の大混乱が生じた。墓堀り人夫のストライキが社会に衝撃を与えたことでも有名)について本書では他の著者からもまったく言及がない。その後、1979年にサッチャー保守党政権の政権交代を許し、トニー・ブレアが、ブレイディ氏らから批判されている「第3の道」という斬新な政策をとるまで政権奪回ができなかったこの英国労働党の苦難の歴史をまったく捨象しているのが残念だ。

   また、日本では、団塊の世代を含む高齢者にかかわる社会保障費の増加により、財政が硬直化・悪化しつつあるという現実について全く触れられないのも、ブレイディ氏は、英国在住で、日本経済の専門家ではないことからして仕方ないとしても、他の著者がきちんと指摘して議論すべきだろう。

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