2020年 4月 2日 (木)

都市と農村、社会構造 中国の本質を学ぶ2冊

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■『現代中国 都市と農村の70年』(著・浜口允子 左右社)
■『中国の行動原理』(著・益尾知佐子 中公新書)

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   著しい経済成長とともに、相当のスピードで高齢化が進んでいる中国。都市部においては目を見張るようなICT(情報通信技術)の活用が見られる一方で、地方においてはまだまだ基本的なサービスインフラが整わない箇所もある。摩天楼の繁栄の足元での庶民の生活ぶりについて、我々はよく目にするところである。高齢化問題についてもしばしば報道されるようになった。しかしながら様々目にする事象は、どれも大国の断片にすぎないように思われる。

   一方、どの国の官僚機構でも行政と政治との関わりがある。行政が様々な団体等から受けるプレッシャーや行動様式は必ずしも我々とは同じではなく、しばしば理解の困難の元になる。中国の場合、党と政府との関係、政府の各省庁の関係、中央政府と地方政府の関係の複雑さ等に直面することも多いが、上述のような経済社会状況とも相まって、どのような構図でこの国を見たらよいのか、戸惑うこともある。

   ここで掲げた二つの書は、そうした中国を深く知る上で、有効な切り口をそれぞれ提示するものである。

わかりやすい補助線を与えてくれる

   浜口氏の著書は、都市と農村の二元性を語る上でのキーワードとして、「反哺」を用いている。都市と農村の二元性、もう少し言えば格差の是正が求められていることは周知であるが、例えば2004年の「胡錦涛報告」や、2013年から数回発出されている「習近平発言」において都市と農村について触れた箇所で、この語は用いられている。本来の意味は「カラスの子が成長したのち、親ガラスに口移しで餌を食べさせること」を意味するが、この語の使用は「都市=養ってもらった側」、「農村=養った側」の構図を示すものであり、今の「三農問題」(農村は苦しい、農民は貧しい、農業は危うい)にまで、格差問題は残っていることの顕れと著者は指摘する。その構図を前提に、中華人民共和国創立以来の都市と農村の歴史を、著者の農村での濃厚なフィールド調査も参照しながら描写し、考察を加えている。

   益尾氏の著書では、中国の対外行動を理解する上で、国内、すなわち「中国社会の動き方のパターンや傾向性」を把握する必要性を説いている。具体的には、中国の社会構造はその伝統的社会である「外婚制共同体家族」(エマニュエル・トッド)が派生した形を採り、家父長のバイオリズムが組織の動き方に波を与えるとともに、社会のあらゆる組織で、それぞれの司を所管する息子たちがライバルとして競い合うと指摘する。そこでの社会の秩序、統制具合は、家父長と息子たちの力関係で決定される面がある。益尾氏はそうした視座を持って、党と政府の関係性の歴史や、地方政府、政府組織のビヘイビアをダイナミックに描写し、時にそれが国外行動に表れることを記述している

   いずれも評者にはわかりやすい補助線を与えてくれたと感じられた。両書とも論理構成や主張が明快であり、是非おすすめしたい。

厚生労働省 ミョウガ

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