2021年 8月 6日 (金)

中島みゆき「ここにいるよ」
コロナ禍、再生の願い

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   タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」

   ライブが出来ない、コンサートツアーに出られない。人が集まれないからスタジオに入ってのレコーディングもままならない。

   ただ、そういう時だからこそ出来ること、こういう時だからこそ届けたい歌がある。そんな思いから生まれた企画というものもある。

   もし、2020年がいつものような音楽活動が出来ていた年だったら、こういうアルバムは生まれていなかったのではないだろうか。

   12月に発売された中島みゆきの2枚組セレクション・アルバム「ここにいるよ」はまさしくそんなアルバムだった。

  • 「ここにいるよ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ、アマゾンサイトより)
    「ここにいるよ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ、アマゾンサイトより)
  • 「ここにいるよ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ、アマゾンサイトより)

「ここにいるよ」と「ここにあるよ」

   ベストアルバムとセレクション・アルバムとは明らかに性格が違う。

   ベストアルバムというのは、そのアーティストにとっての「ベスト」と思われる作品集だ。中には代表曲、シングル曲の集大成というものもあれば、曲の知名度の有無を問わずその人にとっての「ベスト」を重視しているものも少なくない。

   セレクション・アルバムは違う。

   ひとつの意図やテーマに沿って選ばれている。そこに筋の通った流れがある。つまり「メッセージ・アルバム」という言い方もできる。

   「ここにいるよ」は、そのタイトルが全てを物語っている。DISC1は「エール盤」、DISC2が「寄り添い盤」と銘打たれた26曲には、なぜこの曲を選んだか、という強い想いが流れている。

   中島みゆきは、今年の1月にツアー「LAST TOUR・結果オーライ」計24本をスタートさせていた。全国を移動しながらコンサートを行うことの様々なハードル。納得できるコンサートが出来るうちに幕を下ろしたいという最後のツアーは計24本中8本を終えたところで中止になってしまった。アルバムのタイトルに「歌いに行くことはできなくなっても、私はここにいる」というメッセージを読み取ることは容易だろう。

   「LAST TOUR」の内容は「見納め」ならではの選曲だった。一つのコンサートの中に織り込まれた「終わり」と「始まり」。そこにも「伝えたいこと」が綴られていた。

   セレクション・アルバム「ここにいるよ」は、そうしたツアーを更に発展させたような選曲だった。

   何しろ、DISC1「エール盤」の一曲目が94年の「空と君のあいだに」で二曲目が95年の「旅人のうた」なのだ。

   中島みゆきは、70年代、80年代、90年代、00年代と4つの時代でシングルチャート一位を記録した唯一の女性シンガーソングライターである。その2曲はともに90年代の一位だ。これ以上ない豪華の並び、ということになる。

   とは言え、そういう選曲が「チャート」や「セールス」を意識してされたわけではないことは歌詞が物語っている。アルバムタイトルになった「ここにいるよ」は、「空と君のあいだに」の中の「ここにいるよ 愛はまだ」「ここにいるよ いつまでも」から取られている。「旅人のうた」には「忘れないものも ここにあるよ」と歌われている。

   「ここにいるよ」と「ここにあるよ」。それは、なぜこのアルバムがその2曲で始まっているかの答えではないだろうか。

   それだけではない。DISC1「エール盤」の3曲目はTOKIOに提供した曲のセルフカバー「宙船」で、4曲目は、今、最もカラオケで歌われている曲でありカバーも多い「糸」だ。オリジナルは94年のアルバム「LOVE OR NOTHING」の中にひっそりと入っていた。そして、5曲目が「ファイト!」である。

   どこに向かうか先も見えずに迷走する地球という「宙船」。「出逢いの歌」である「糸」は、「人」に逢えない年になってしまったからこその選曲だろうし、「ファイト!」は、タイトルの言葉に尽きる。10曲目には、なんと「時代」が入っていた。それもまだプロとしては未熟だった75年のオリジナルではなく、93年に歌い直したものだ。

   「そんな時代もあったねと いつか話せる日が来るわ あんな時代もあったねと きっと笑って話せるわ」は、まさしくすべての人の願いだろう。

タケ×モリ プロフィール
タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーティスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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