2024年 4月 24日 (水)

東京五輪「無観客」の現実味 サッカー欧州選手権で集団感染相次ぐ

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   東京五輪に思わぬ伏兵が出現している。欧州などで行われているサッカーの国際試合で、新型コロナウイルスの大量感染が起きているのだ。

   東京の感染者は増加傾向が鮮明になっていることに加えて、海外の巨大スポーツイベントで相次ぐクラスター。五輪開幕が3週間後に迫る中で、政府は「無観客」も視野に入れた対応策の検討に追い込まれている。

  • ユーロ2020 スコットランドで約2000人の感染確認(写真:AP/アフロ)
    ユーロ2020 スコットランドで約2000人の感染確認(写真:AP/アフロ)
  • ユーロ2020 スコットランドで約2000人の感染確認(写真:AP/アフロ)

サッカーの国際試合で集団感染

   英国では6月18日、ロンドンで開催されたサッカー欧州選手権の「スコットランド―イングランド戦」で集団感染が発生した。応援のため、英国北部のスコットランドからロンドンに詰めかけたサッカーファンのうち1294人が、30日までに新型コロナウイルスに感染していたことがわかったのだ。このうち397人はロンドン市内のサッカー場で実際に観戦していた。他はパブなどで応援していた人だという。

   サッカー欧州選手権を巡ってはフィンランドでも大量の感染者が出ている。6月21日にロシアのサンクトペテルブルグで開催された1次リーグを観戦するため、フィンランドから現地入りしていたサポーターのうち約300人が帰国後、コロナに感染していたことがわかった。サンクトペテルブルグでもデルタ株の感染が急増していた。

   このほか、6月13日からブラジルで開催中のサッカー南米選手権「コパ・アメリカ」でも各国の選手やスタッフの感染が相次いでいる。21日までにすでに140人の感染が確認されているという。

「バブル方式」違反多発で役立たず

   相次ぐ集団感染に、東京五輪関係者は神経をとがらせている。

   たとえば、英国ではワクチン接種が進んでいたにもかかわらず、スポーツイベントで集団感染が発生することになったからだ。朝日新聞によると、英国では成人の約85%がワクチンの1回目を、約62%が2回目の接種を終えている。しかし、インドで確認された変異株(デルタ株)が猛烈に拡大。1日の新規感染者が急増しており、6月30日には2万6068人を記録している。

   「コパ・アメリカ」は、東京五輪・パラリンピックと同じく、選手らの行動は競技場や宿泊施設などに限る「バブル方式」を採用していた。しかし、違反事例が発覚、感染が拡大している。東京新聞によると、主催する南米サッカー連盟は、48時間ごとの検査や無観客開催などで対応しているものの、封じ込めには至っていない。

   ブラジルのコロナ死者は約50万人を超え、最近も1日の死者は2000人前後で高止まり。大会への懸念は開催前から指摘されていたが、低支持率にあえぐボルソナロ大統領は人気回復を狙って開催を強行した。東京新聞は「大会が感染イベントになった」という地元の批判の声を紹介している。

再抽選結果を先送り

   こうした状況を受けて、政府と東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、大規模会場や夜間に実施される東京五輪の一部競技を無観客とする方向で調整に入ったようだ。7月2日の読売新聞が「独自」ニュースで報じている。「東京都などで新型コロナウイルスの感染が再拡大し、感染対策のさらなる強化が必要だとの声が出ているため」としているが、海外のスポーツイベントでのコロナ感染拡大にも配慮したに違いない。

   東京などで11日まで継続中の「まん延防止等重点措置」が解除された場合、五輪の観客は「1万人以下」で開催されることになっていた。しかし、東京では新規感染者数が増加傾向。読売新聞によると、政府内では首都圏での重点措置の解除は困難との見方が強まり、感染状況が改善されない場合、五輪期間中に緊急事態宣言の再発令が重なる恐れもあることから、人流を抑えるために大規模会場や夜間に実施される競技などについては無観客とする方向に傾いているという。

   菅義偉首相も1日、記者団に「(緊急事態宣言となれば)無観客もあり得る」と語っている。読売新聞によれば、組織委は「1万人以下」を前提に、開閉会式や、サッカー、野球・ソフトボールなど7競技について販売済みチケットを再抽選し、6日に結果を公表する予定だったが、政府の判断後に先送りする方針だという。

五輪相がワクチン無理解

   東京の感染拡大や、海外の巨大スポーツイベントで集団感染。開幕を目前に控えた東京五輪は、手厳しい現実に直面しているが、何れも想定されていたことだけに、後手に回っている感が否めない。

   加えて政府部内のトンチンカン発言が混乱に拍車をかけている。丸川珠代五輪相は6月29日、「東京五輪はそもそもワクチン接種を前提としていない」「ワクチンは1回目の接種で、一次的な免疫をつけていただく」などと記者会見で語り、あきれられた。

   自民党の額賀福志郎元財務相は6月28日、コロナ感染を公表しているが、すでに1回目のワクチンを打っていたことが明らかになっている。

   ワクチン2回接種が必要不可欠というのは今や常識。厚生労働省のウェブサイトでも、モデルナ社のワクチンは「十分な免疫が確認されたのは、2回目を接種してから14日以降」、ファイザー社のワクチンも、「最も高い発症予防効果が得られるのは、2回目を接種してから7日程度経って以降です」と解説されている。

   来日する五輪選手団にワクチン接種は義務付けられているわけではない。IOC(国際オリンピック委員会)によると、来日する各国・地域代表団の84%、報道関係者の70~80%がワクチン接種済みとなる見通しだ。一部では副反応を嫌って接種しないで来日する選手もいることも、報じられている。

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