2024年 4月 20日 (土)

「自宅療養」政府方針に「重症以外は入院できないのか」 修正されたが残る不安

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   新型コロナウイルスの病状が悪化しても入院できない――いったん、そのように読み取れる政府方針が出たが、猛反発を受けて修正を余儀なくされた。

   とはいえ、感染者数が全国的に急増という現状は変わらない。病状が急変しても、病床ひっ迫で受け入れてくれる病院が見つからないリスクが日々高まっている。

  • 自宅療養中に病状が悪化、が怖い
    自宅療養中に病状が悪化、が怖い
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「重症」「中等症」誰が判断

   問題の政府方針は2021年8月3日付で出た。入院対象の重点は「重症患者」「特に重症化リスクの高い者」とされていたので、驚きが広がった。「中等症以下の患者は入院できないのか」という批判が与野党から高まり、政府は5日、「中等症患者で酸素投与が必要な者」「酸素投与が必要でなくても重症化リスクがある者」と修正した。

   このドタバタでは、いくつか問題点が指摘された。一つは「重症」「中等症」の区分けの難しさ。それぞれ定義がはっきりしない。誰が判断するのか。医療現場では「中等症」と言っても、世間常識よりも重い病状を指し、重症となると、かなり死ぬ可能性が高い状態を指すという。中等症の時に入院しないと手遅れになりかねない。

   コロナは病状が急変することが知られている。ゆえに早期の診断、治療や入院が望ましいとされている。

   6日の朝日新聞「声」欄には現役医師の投書が掲載されていた。新型コロナでは、息苦しさをあまり感じず、知らぬ間に悪化する「幸せな低酸素症」が見られることもあるという。本人が「苦しくない」といっていたのに亡くなるケースもあり、怖い、と書いている。

都は「早期退院」促すことに

   二つ目の問題点は、政府方針が修正されたからと言って、医療体制が好転するわけではないということだ。コロナ患者を受け入れる病棟では、感染拡大を防止するため、通常よりも手厚い設備や要員配置が必要になる。急に入院施設を増やせない。

   これは、政府が3日付で、いったん「入院は重症者」を打ち出した大きな理由だったと見られている。コロナ感染者急増→入院者増加見込まれる→入院施設がひっ迫するが、急増できない→入院者の制限で対応、というわけだ。

   5月に大阪で医療崩壊状態に陥った時は、自宅療養中に病状が悪化、亡くなった人が多数いたとされる。そんなこともあり、いま最も心配されているのは、感染者が1日5000人を突破した東京都だ。

   共同通信は5日、「東京都、中等症の入院継続 基準は変えず体制整備で対応」と報じている。

   具体的には、入院者の症状が改善したら医師の判断で早期に退院させ、自宅やホテルでの療養に移行して病床を確保する。自宅や宿泊療養が困難な高齢者や障害者らは軽症の場合でも入院対応を継続する、という。

   一方で、すでに、「8月になって、東京都内で自宅療養中の感染者とみられる、少なくとも8人が死亡していた」(FNN)などという報道も出ている。

尾身茂会長は知らなかった

   今回の混乱で、多くの国民があきれたことはもうひとつある。政府の新方針を、当該政府関係者が知らず、自民党など与党からも批判を浴びて修正されたことだ。

   政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は4日の衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、入院対象者を重症者らに絞り込む政府方針について、「政府とは毎日のようにいろいろなことで相談、連絡、協議しているが、この件に関して相談、議論したことはない」と述べた。

   尾身氏は、重要な政府関係者。専門家として政府のコロナ対策に関しアドバイスする立場なので、国民にはわかりにくい。さらには政府判断に対し、与党の自民党や公明党からも強い批判が出たことも異例だった。

   6日の日経新聞は、コロナ対策で政府方針がひっくり返った例として、7月に西村康稔経済財政・再生相が、緊急事態宣言下で酒類を出す飲食店に金融機関からの働きかけを求めた一件を挙げている。与党が耳身に水ということで撤回を強いられた。

   同紙は菅政権の「調整役の不在」を挙げ、「対策が調整不足で二転三転する間に感染拡大がさらに進む」と指摘。朝日新聞は厚労省幹部に取材し、感染急拡大で、与党幹部や日本医師会、専門家への根回しが十分に行われないまま当初の方針発表が見切り発車で行われた、と書いている。

   全体の「司令塔」となる菅義偉首相は6日の広島平和記念式典のあいさつで、原稿の重要な部分を読み飛ばす失態があった。産経新聞によると、原稿の1ページ分を読み飛ばしたという。NHKは式典を生放送し、首相あいさつを字幕表示していたが、途中で中断したという。

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