大富豪の役割 元村有希子さんが前澤友作氏の宇宙旅を評価する理由

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大気圏外の開放

   元村さんは科学記者が長く、テレビのコメンテーターとしても活躍する。私は現役時代、何かの席でお目にかかり、ご挨拶した覚えがある。

   同業者の簡潔な文章はいいなと、改めて思う。論旨以前に、まず読みやすい。新聞記事は中学生にわかるように書きなさいと教育された新人時代を思い出す。

   前澤氏の「散財」への評価については、読者の意見も分かれるかと思う。実は私も、やたらとお金を配ることには「?」と思うことがある。他方、己の才覚で稼いだ金を何に使おうが自由ではないか、という意見もわかる。ただし、無難な「両論併記」では、社説はともかくコラムは成立しない。キレが悪くなるからだ。褒めるにせよ貶すにせよ、批判(炎上)覚悟で筆者の立ち位置をハッキリさせる必要がある。

   元村さんは定石通り、大富豪にしかできない変革もあると明快に主張する。変革の最たるものが、国家間のマッチョ競争が支配してきた宇宙空間の開放だと。このくらい踏み込まないと、読ませるコラムにはならない。

   元村さんはふだん、科学環境分野の社説を書いておられると拝察するが、アウトプットの性格や媒体によって筆致を変えるのもまた、プロの技である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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