2024年 4月 20日 (土)

企業アカウントは「意外に嫌われている」 炎上も経験「堀商店」の運用術

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【ツイッターは仕事!企業公式「中の人」集合(23)】

   名古屋市の玩具問屋「堀商店」の公式ツイッターは、2011年3月に誕生した。当時は、現在ほど有効なモデルケースがなく、一年で運用を断念した。だが18年11月に更新再開すると、ツイートの「バズり(拡散)」やプチ炎上を経験し、ローカルテレビの密着取材を受けるほどのアカウントに成長した。

  • 堀商店ツイッターアカウント担当者
    堀商店ツイッターアカウント担当者
  • 名古屋市にある実店舗前で
    名古屋市にある実店舗前で
  • 堀商店ツイッターアカウント担当者
  • 名古屋市にある実店舗前で

人気アカウントまねても「成功」できない

《堀商店【公式】@景品・販促品はおまかせ!》縁日用品や、イベントに必要な景品・販促品を、フランクな文体で紹介。アカウント開設後、一度の長い休眠期間を経ているが、22年6月現在まで、同一担当者が運用を担っている。

   担当者は、ゼネラルマネージャーの成瀬昭則さん。主業務は、受注、商品提案、仕入れ、OEM(他社ブランドの製品製造)対応だ。

   ツイッターを最初に立ち上げた2011年3月、当初の指標は「フォロワー増」だった。だが、「URLを添え、無個性な文章で商品紹介する」投稿ばかり。1年ほど続けたが、労力を割く価値を見出せずにフェードアウトした。

   18年の冬、取引先から「現代はやっぱり、SNSやらないと」と背中を押され、運用を再開。約6年ぶりに触れたツイッターは様変わりしており、さまざまな企業が「担当者のプライベートを垣間見せつつ、フレンドリーに情報発信・交流する」コミュニケーションツールにしていた。まずは成功者にならおうと、人気アカウントの運用を1年間まねした結果、「期待したほど成果は出ませんでした」と振り返る。

「元々の知名度や規模、扱う商材などが企業ごとに違うので、『上手くいっているやり方をなぞれば、必ず自社も成功する』わけではないんです」

   最適な運用方法を探るべく、改めて自社の強みを分析し、扱う商品の情報や魅力の把握に努めた。さらに「世の中に対し、自社アカウントはどうありたいか」を自身に問い直したところ、

・おもちゃ作りに手いっぱいで、ツイッターを持たず、消費者に情報を届ける余裕がないメーカーの助けになりたい
・ユニークなおもちゃの数々を、広く知ってほしい
・見る人に笑ってもらい、元気になってほしい

こうした思いがあると、気付いた。

「他社の模倣でなく、自社や商品の面白さを咀嚼(そしゃく)し、自分の言葉で語って、ユーザーに喜んでもらうのが私の仕事だと」

リターンよりリスク大きい

   以来、成瀬さんは何度もツイートをバズらせ、売り上げにも貢献してきた。

   例えば21年7月に、「うんち型」カステラを焼ける家電おもちゃ「わっしょい うんち焼き」を紹介した際、商品名と価格、「おい...時代が動くぞ...!!!」の一言で、7万「いいね」を獲得した。

   通常だと、「月に50個も販売できれば、よく売れた方」。ツイートがバズった直後は、1日に100~200個の注文が入り、供給が間に合わなくなるまでに。メーカーからは「作ったものを、たくさんの人に知ってもらえてうれしい」と喜ばれた。

   一方、「プチ炎上」も起きた。いつか、幼稚園や子ども会の役員になるかもしれない「女子」を顧客に見立て、「堀商店が力になるから覚えておいてほしい。おじさんが約束する」と、21年10月に投稿。多くは「覚えておきます!」「既にお世話になりました」と好意的だったが、「なぜ『女子』向けなのか」との指摘や、「おじさん」表現に不快感を示す声も一部あった。

   成瀬さんは「事実、自分は世間的に『おじさん』と呼ばれる年齢であり、悪意や他意はなかった」。ただ、それを前面に出し過ぎたり、情報の受け手を「女性」「男性」と限定したりするのは望ましくなかったと、反省した。

「常に『このツイートは誰かを不快にしないか』と考えるのが大事ですね。正直、ツイッターはリターンより、リスクの方がはるかに大きいと覚悟しています」

   企業アカウントは「意外に嫌われている」と、成瀬さんは考える。担当者が独特のノリでツイートするのを好まない人が一定数いる、との指摘だ。人間味を適度に出すのはよいが、「会社の名前を借りて人気者になり、チヤホヤされたい」気持ちがにじんだり、アカウントを「私物化」したりしていないか――。

カップラーメンに救われた

   難しいのは、ツイッターで「大事な話をまじめに伝えると、受け手がサッと引く傾向にある」点だ。肝いりのPRツイートをしても、取り留めのない私的投稿ほどの「エンゲージメント(ツイートへのリアクション)」を得にくい。「ホームランを期待されているのに、三振に終わるような無力感」。成瀬さんは、こう表現する。

   成績が振るわなくても、日々投稿し続けなければならない。「インプットに対し、アウトプット過多」に陥りやすいと感じており、時折、息切れ状態になるそうだ。一時的に運用から離れる場合もあるという。

   そうした中で、ふっと気が楽になった出来事があった。21年8月、昼にカップラーメンを食べたのがきっかけだ。フタの裏に、「公式ツイッターをフォローしてにゃ!暇つぶしくらいにはなるにゃん!」と、カップラーメンのアカウントに誘導する一文を見つけた。

「ああ、多くの人にとって『ツイッターは暇つぶしなんだ』、と。必要以上に気負わなくていいのかと、目からウロコが落ちました」

   見る人への配慮なく、好き勝手にしてよい、との意味ではない。ツイッターは仕事であり、達成すべき目標はあるが、「暇つぶししている人たちが、少しでも楽しめる運用を続けるのが理想」と成瀬さん。「うまくおふざけ」していきたいと締めくくった。

各企業公式ツイッターアカウント担当者(通称:中の人)をJ-CASTトレンド記者が突撃取材。「業務」として日々ツイッター運用に取り組む担当者たちの魅力を紹介する。
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