2024年 4月 24日 (水)

木材のプロ考案「木の心地よさ感じられる場」 家具設置だけで印象一変

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■連載(第3回)

   東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)新幹線統括本部「東京新幹線運輸区」の一角に、無垢材家具を導入し、「木の心地よさを感じられる場」を生み出す様子や、社員の心身や行動、働き方の変化を、J-CASTトレンドが取材・検証し、伝える連載。

   第3回は、家具搬入前後の変化を写真で見ていく。テーブルや本棚を、どのようなコンセプトで作り出し、また配置したのか。家具提供および搬入・設置を担った西川バウム(埼玉県飯能市)の浅見有二代表と、デザインアドバイス協力の乃村工藝社(東京都港区)デザイナー・柳瀬弘典さんを取材した。

  • 乃村工藝社がデザインアドバイスし、西川バウムが家具提供および搬入・設置した
    乃村工藝社がデザインアドバイスし、西川バウムが家具提供および搬入・設置した
  • 搬入前の状態(画像2)
    搬入前の状態(画像2)
  • 足元までつながった板目が印象なテーブル
    足元までつながった板目が印象なテーブル
  • 縁側デッキ側から見た空間
    縁側デッキ側から見た空間
  • 木を割った板を横に積み、壁際に設置した背の低い本棚
    木を割った板を横に積み、壁際に設置した背の低い本棚
  • コケの世話をするひとときを、気分転換に
    コケの世話をするひとときを、気分転換に
  • 乃村工藝社がデザインアドバイスし、西川バウムが家具提供および搬入・設置した
  • 搬入前の状態(画像2)
  • 足元までつながった板目が印象なテーブル
  • 縁側デッキ側から見た空間
  • 木を割った板を横に積み、壁際に設置した背の低い本棚
  • コケの世話をするひとときを、気分転換に

材料本位でデザインを考える

   「木の心地よさを感じられる場」のデザインに際し、柳瀬さんが前提にしたコンセプトは「日常の景色にプリミティブ(原始的・素朴)さを感じる、マグネットスペース」。

   このコンセプトをもとに柳瀬さんがラフを描き、浅見代表が適した木材を選んで、家具を作った。浅見代表は、元となった木が生えている姿を家具から想像できるか、を重視したと話す。

浅見代表「見た目だけ似せているものとは違う、素材感・本物感を味わってほしいと考えました。微妙な色の違い、手触り、においとか。もちろん、木そのものの個性も」
柳瀬さん「無骨さが前面に出ないように気を付けつつ、可能な限り素材の持ち味を生かした形にしたいと思っていましたね。」

   こうした思いで設置した家具は、大まかに、(1)1本の丸太をそのまま縦に割ったようなデザインの本棚、(2)2組のテーブルとイス、(3)ヒノキの角材を並べた縁側デッキ、(4)木を割った板を横に積んだ本棚、の4点。「東京新幹線運輸区」に入ると正面に見える壁に置いた(1)を軸とし、(2)が左、(3)が右にそれぞれ展開、(2)と(3)前の壁際に(4)が置かれている、線対称の構図だ。

   搬入前の状態は画像2を参照。(1)にはラックとハンガー掛け、(2)はテーブルとイスが2組、(3)は周囲の視線を遮断できる背の高いイスとテーブルがあった。

柳瀬さん「デザインの起点になったのは、(1)本棚でした。特に思い入れがあります」
浅見「私にとっては制作に一番時間がかかった家具です(笑)さまざまな木材を、バランスを見ながら組み合わせるのが難しかったですね」
「丸太を割った縦の印象が強まるよう、棚板(横軸)を少し奥に入れている」と柳瀬さん
「丸太を割った縦の印象が強まるよう、棚板(横軸)を少し奥に入れている」と柳瀬さん

   浅見代表のイチオシ家具は、(3) 縁側デッキだ。人のすねほどの高さで、思わず寝転びたくなる。

浅見代表「例えば、ここに同じ長さのソファを置いても、心理的な距離感の兼ね合いで3人は座らないと思います。もし先に誰か使っていたら、座るのに抵抗がある人もきっといますよね」
柳瀬さん「すると、実質1人用になる可能性も...」
浅見代表「そうなんです。でも縁側デッキなら、座れる場所(辺)がいくつもあるので必ずしも横並びでなくともよく、一緒に使いやすい。側面や背面が空くので荷物も置けます」
90センチ角で、間を離して使うこともできる
90センチ角で、間を離して使うこともできる

異彩を放つ「緑」の正体

   唯一、搬入前後で設置家具に差がないのが(2)。元のテーブルにも木目があった。

搬入前の状態。主に、打ち合わせやミーティングの場として使われている
搬入前の状態。主に、打ち合わせやミーティングの場として使われている

   搬入後は、より木の「素材感」を前面に押し出したテーブルになった。くっきりとした茶色と、白に近い茶色が組み合わさり、バイカラーのようだ。イスも木を伐りだして作っており、丸太型の切株が2つ、背のないベンチ型が3つ。ベンチ型は、木についている枝がそのままイスの足となっている。

柳瀬さん「テーブルは、30センチ幅の板材を3つ剥ぎ合わせています。それから、浅見さんに頼み込んで置いてもらった『コケリウム』が良いアクセントになっています」
浅見代表「山に入ればコケだらけなので、これまで気にも留めていませんでした。でもこうして飾ってみると、みずみずしくてきれいですね」
柳瀬さん「植物なのでお世話が必要なのですが、水やりも気分転換やコミュニケーションのきっかけになってくれればいいなと思います」

   コケリウムは、(4)の天板の上にも飾られている。クリーム色に近い、淡い茶色の家具の中で、鮮やかな緑が異彩を放つ。

浅見代表が、本物の竹を使ってコケリウムの器を作った
浅見代表が、本物の竹を使ってコケリウムの器を作った

   二人は数々の家具を通じ、「自然な流れで、近くにいる相手と木の話をしたくなる」雰囲気を作りたかったと総括する。

   木材はこれまで、建築材料として使えるか否かで価値判断がされてきた。しかし曲がっていたり、節が多かったりしても、それらを個性として受け止めれば見え方が変わってくる。浅見代表も柳瀬さんも、使う人にとって良い木とは何なのかを考え、木材の魅力を引き出すことを第一に、家具へ落とし込んだ。

浅見代表「全ての家具を木材にしなくてもいいんです。たとえ一部であっても、木でできた家具を置いて『そこに行くとほっとできるスペース』を作ること。そこから、木材活用の第一歩が始まります」

   連載第四回はJR東日本協力のもと、家具搬入直後の心境・行動の変化などについてアンケート調査し、回答結果をレポートする。


柳瀬弘典(やなせ ひろのり)
株式会社乃村工藝社 空間デザイナー
文化施設・企業PR施設などの空間デザインを主に担当。2020年オープンの乃村工藝社新オフィス内コミュニケーション・スペース「RESET SPACE_2」にてオリジナル家具を担当したことを契機に木材活用に興味を持つ。近年は、大学や企業オフィスなどの非住宅における木質化プロジェクトに参画し実績を増やしている。直近では「王子ホールディングス株式会社本社(本館ビル)エントランスリニューアル」(2022年10月)デザイン・設計を担当。
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