2024年 5月 3日 (金)

大迫勇也ではなく柴崎岳 森保一監督が求めた「経験」に違いが

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【連載】サッカー・カタールW杯 森保ジャパン勝負の1年

   メディアやファンから当落線上と評されていた柴崎岳が日本代表メンバーに選出され、ほぼ当確と見られていた大迫勇也が選出漏れ。その差は、記者からの質問を受けた森保一監督の返答に表れていたように思う。

「大迫選手と原口(元気)選手が外れたことで、前回大会の経験者が少なくなっている。特に攻撃陣には一人もW杯経験者がいない。そこは、ミーティングでの議論になりましたか」

   記者からの質問途中に森保監督は表情を緩め、質問後に一呼吸置いてから話し始めた。

  • 大迫勇也選手のカタールW杯代表メンバー入りは、かなわなかった(写真:アフロ)
    大迫勇也選手のカタールW杯代表メンバー入りは、かなわなかった(写真:アフロ)
  • 会見中、森保監督は硬い表情を見せることが少なくなかった(J-CASTトレンド撮影)
    会見中、森保監督は硬い表情を見せることが少なくなかった(J-CASTトレンド撮影)
  • 大迫勇也選手のカタールW杯代表メンバー入りは、かなわなかった(写真:アフロ)
  • 会見中、森保監督は硬い表情を見せることが少なくなかった(J-CASTトレンド撮影)

「本当に、そこは議論になりました」

「おっしゃる通りです。我々のスタッフミーティングの場を見て頂いているような、見られているような質問でありますけど」

   含み笑いを見せた森保監督。「本当に、そこは議論になりました」と実情を明かした。

「選ぶ時にW杯経験者がいなくなるところは、(発表した)メンバーを見た時に我々も考えるポイントの一つとして話し合いました」
「経験者の経験は非常に大切ですけど、経験のない選手たちのW杯で成功したいという野心をもって戦ってくれるエネルギーを期待して、メンバー選考に至りました」

   アジア最終予選は、「本大会の出場権を獲得するというミッションを、確実にやり遂げられる固いメンバー選考」だった。そこでは経験が必要になり、間違いなく計算できる大迫や原口が選出され、実際に活躍した。

   一方で、筆者が久保竜彦氏を取材した際、大迫についてこんな指摘をしていた。「(けがもあるだろうけど)最後のところの爆発の力が無くなってきた。やっぱり、31歳くらいになると(自分含め多くのFWは)パワーやキレが無くなってくる」。アジア最終予選とは違う局面が待っているカタールW杯での活躍には、懐疑的な声が挙がっていた。田中マルクス闘莉王氏も自身のYoutubeで現在の大迫の状態を嘆き、代わりには鎌田大地が良いのではと提言している。

   久保氏や闘莉王氏が感じていたことは、当然、日本代表スタッフも議論したはず。それが森保監督の挙げた「野心」「エネルギー」という言葉に繋がり、大迫ではなく、現在コンディションの良い鎌田や上田綺世への期待になったのだと思う。

キャプテンシーある選手は「後ろ」に

W杯日本代表メンバーの選考について報道陣の質問に答える森保一監督(J-CASTトレンド撮影)
W杯日本代表メンバーの選考について報道陣の質問に答える森保一監督(J-CASTトレンド撮影)

   一方で、チームの核となる中盤の底やセンターバックには「試合をコントロールする経験が必要になる」。元韓国代表フィジカルコーチ・池田誠剛氏の指摘だ。

   森保監督から、大迫や原口を選出しなかった理由を耳にした筆者は、「先ほどのW杯経験者の力ですが、その点が柴崎選手の選出理由でしょうか」と聞きたかった。だが、その前に会見の質疑応答は時間切れとなってしまった。

   そのため、ここからは筆者のこれまでの取材に基づいた推論になる。

   多くの監督経験者は、「キャプテンシーがある選手が後ろにいる方が、チームは落ち着く」と教えてくれる。2010年南アフリカW杯の闘莉王氏や中澤佑二氏。18年ロシアW杯の長谷部誠が、その役割を果たした。逆に06年ドイツW杯は、大会直前の親善試合のドイツ戦から、中田英寿氏をはじめとする「前の選手」たちにパワーが移ってしまったと言われている。同様に14年ブラジルW杯も前の選手たちの「自分たちのサッカー」に引っ張られてしまった。結果論だが、日本は両大会ともグループリーグを勝ち抜けなかった。

   柴崎はロシアW杯を、長谷部と共にボランチの位置でプレーを経験している。所属するスペイン2部リーグでの復調だけでなく、「必要なW杯経験者」なのだと思う。森保監督と「ドーハの悲劇」を経験した都並敏史氏も『サッカーダイジェスト』の記事内で「若手よりも経験から柴崎」と語っていた。

   森保監督は三人選べるGKに、東京五輪のレギュラーである谷晃生ではなく、川島を選んだ。つまり、守備陣には経験を。攻撃陣にはキレをという基準も感じられる。

   森保監督がカタールW杯で求めるものが、柴崎と大迫の明と暗になったのかもしれない。そんなことを感じた記者会見だった。(選手敬称略)

(石井紘人 @ targma_fbrj)

石井紘人(いしい・はやと)
ラジオやテレビでスポーツ解説を行う。主に運動生理学の批評を専門とする。著書に『足指をまげるだけで腰痛は治る』(ぴあ)『足ゆび力』(ガイドワークス)など。『TokyoNHK2020』サイトでも一年間に渡り、パラリンピックスポーツの取材を行い、「将棋をスポーツ化した競技『ボッチャ』」などを寄稿。 株式会社ダブルインフィニティ代表取締役でもあり、JFA協力、Jリーグと制作したDVD『審判』、日本サッカー名シーン&ゴール集『Jリーグメモリーズ&アーカイブス』の版元。現在『レフェリー』の販売中。

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