「ワタシ、お裁縫できないのよ」コシノヒロコさん
今年の初め、世界的に活躍するデザイナーのコシノヒロコさんとお仕事をさせていただいた。
いや~、お若い! 今年デザイナー生活50周年、古希を迎えられた方とはとても思えない。お肌もツヤツヤ、髪もサラッサラ! そして何より、目ヂカラがすごい。コシノさんとお話ししていると、その瞳からエネルギーが空気中に次々と放出され、こちらまでアドレナリンがバンバン出てくる、といった感じ。ものすごいパワーをお持ちの方なのだ。
半世紀にわたってファッション界に君臨されているのも、納得がいく。打ち合わせは大いに盛り上がり、「デザイナーとは何か?」と質問させていただいた。そこでコシノヒロコさんから出た言葉とは・・・
「経営、人事もデザイナーの仕事です」
デザイナーはクリエイティブに徹底していればいい。自分の長所を伸ばし誰にも負けない強さを作り、「嫌い」「苦手なこと」は専門家に託す。しかしただ漫然と託すだけではダメ。スタッフの長所を見極めてうまく任せられないデザイナーは、どんなにデザイン能力が高くても成功しないと、おっしゃった。
「私、描くのは得意だけど、実際お洋服を作るのは苦手だし、数字もまったくダメなの。正確な売り上げも把握していないのよ」
すぐさま秘書の方に前期の売り上げ確認をされたコシノさん。ズバリ、年商は100億円以上! すごい、すごすぎるっ!!
そしてもう一つ、経営のデザイン。専門分野に徹するも、トータルでブランディングできなければ、ダメ。デザイナーは、世の中の流れを作り出す職業、俯瞰で見る目がなくてはブランドは成立しないのだ。
そんなコシノヒロコさんは、念願だったパリ・コレに参加するも、10年で打ち切っている。それはなぜか? パリ・コレといえども新作発表宣伝の一つに過ぎず、海外のコレクションで発表する魅力以上に、費用がかかりすぎて企業として得策と言えないからだそうだ。
コシノさんは日本発のファッション文化の育成に精力を尽くし、東京コレクションの運営に奔走されている。デザイナーとしてだけではなく、経営者としての才覚を発揮されているのだ。
打ち合わせの最後に、コシノヒロコさんがおっしゃった一言が全てを物語っている。
「結局、ワタシ、今でもお裁縫できないのよ」