2024年 4月 26日 (金)

映画「靖国」の公開騒ぎ 悪いのはビビッた映画館か

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   番組の冒頭で国谷裕子は、「社会の閉塞感が感じられる中で……」といった。答えが見つからない事件が起こると、よく使われる言葉だ。映画「靖国」をめぐる騒動も、そう見えたのか。

   騒動のきっかけは、週刊新潮2007年12月20日号の記事だった。「靖国」は反日映画で、国の助成金750万円が使われた、という内容だった。これを見た稲田朋美衆院議員(自民)が「政治的な宣伝性が無いことを確認するため」として、助成金を出した文化庁に試写を申し入れた。

「表現の自由として捉えたくない」

   この結果、国会議員向けの試写会が3月に行われたが、その翌週から上映予定の映画館に右翼の「上映中止」の攻勢が始まった。これはネットにも波及し、名前を載せられた映画館に抗議が殺到。東京、大阪の5館が上映を中止。また、名古屋の1館は延期した。

   名古屋の映画館の支配人は、見知らぬ男から「中止」を求められた。「映画を見たのか」「見ていないが、問題があると聞いている」と。支配人は「映画を見てもいないのに、何かが一人歩きしている」といった。

   作家の吉岡忍は、「よくわからないのに拡がった気味の悪さ。意見は違ってもとりあえず見てみるのが、世の中の豊かさなのに、それがなくなっている『恐れ』を感ずる」

   「巻き込まれたくないということなのか」と国谷。

   吉岡は「表現の自由として捉えたくない。職業としてのプロフェッショナリズムとは何かだ。映画でも本屋でも、何でも見せて何でも置いてが当然でしょ。それが引いてしまうのが問題」といった。

「レッテル張ったら話が進まない」

   配給会社などはがんばった。4月23日の一般試写会には、定員200に1500の応募。右翼団体向けの試写会とそのあとの討論会。「反日だ」「いや違う」というなかで、中止を求める声は消えた。とうとう5月3日には渋谷で公開。これまでに、当初の8館を上回る30館の公開が決まっている。

   吉岡も「結果としてよかったが、最初のところが問題だった。(反日という)レッテル張ったら話が進まない。政治家でもメディアの人間でも、プレーヤーであって観客じゃない」という。

   まさしくそこだ。とくに稲田衆院議員だろう。番組は、同議員の「助成金の妥当性を勉強するため、映画の内容とか公開を問題にしたことは一度もない。それが検閲というような捉え方をされたのは、残念だし遺憾です」というコメントを出した。これがNHKの限界なのだろう。

   残念でも遺憾でも、騒ぎが大きくなったときに説明を十分にしようとしなかったのは、公人としてはアンフェアと言われても仕方あるまい。ざっと見た限りでは沈黙しているように見えた。週刊新潮だけでは、3か月間も騒ぎにならなかったのだから。ひょっとして、これを閉塞感といったのか?

                                        

ヤンヤン

 

<メモ:映画「靖国」>
1989年に来日した中国人李イン監督が終戦の8月15日の靖国神社を、10年かけて撮ったドキュメンタリー。軍服で参拝する人、刀作りの職人、抗議する人たち……さまざまな光景をナレーションなしで伝えている。

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