快感！ もっと騙して!!（幻影師アイゼンハイム）

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   ＜幻影師アイゼンハイム＞やはり映画は映像の芸術であって、映像によって物語や情感を作り上げていくものだと再確認した。

   19世紀末のウィーンを舞台に、驚異的な人気を博した幻影師アイゼンハイム。幼馴染であった公爵令嬢を殺された彼は、その死を巡る一世一代のイリュージョンを仕掛ける。本作『幻影師アイゼンハイム』は、ろうそくの明かりで照らし出されたかのような幻想的な映像と、映画そのものがひとつのイリュージョンとなる巧みな語り口によって、「騙される」というこの上なく甘美な味わいを帯びた作品となっている。

   あらすじから、マジシャン２人の対決を描いた『プレステージ』を思い出す人も多いかもしれない。しかし、あちらがトリックの裏側まで見せたリアリズムにはなんとも不似合いな荒唐無稽のオチであったのに対し、イリュージョンはあくまでイリュージョンのままとする本作は、だからこそ最後にそこから浮かび上がる真実が美しい。

   アイゼンハイムを追いながらも彼に惹かれていくポール警部がラストシーンで見せた表情はまさに、観客の表情そのものだ。まるで記憶の断片をかき集めるかのように真実が明かされてゆくその時、あなたの心は「騙された」という快感で満ち溢れているだろう。

   主演はエドワード・ノートン。登場シーンの僅かな所作からすでに情感が漂っており、さすが当代きっての演技派俳優である。彼のいざなう幻想の世界に、身を任せてみてはいかがだろうか。

ジャナ専　なほ

   オススメ度：☆☆☆☆