道路・水道は誰のものか ファンドの「儲け」と自治体の困惑

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   今年の初めから、イギリスの投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンド(TCI)」という長ったらしい名前を何度見聞きしたことか。日本最大手の電気卸「電源開発」の株を大幅に買い増そうとした同ファンドが、安全保障上の理由で国側から中止を迫られ、もめにもめたあの一件だ。

   最近になってTCI側が引き下がることで決着したというが、それにしてもインターナショナルすぎて筆者などにはまるで実感のない話ではあった。ところが、今回のクローズアップ現代「ファンドが"インフラ"をねらう」によれば、あなたの街の身近な道路や水道といった自治体インフラを、ファンドがお買い上げになる動きが進行中なのだという。

60自治体と面談済み

   番組は1000億円程を運用しているという国内大手商社系ファンドに取材した。このファンドは自治体からインフラを購入し、それを自治体に貸す形で儲けようと狙っている。すでに60もの自治体と面談済みだという。

   インフラを売れば、財政赤字に悩み、インフラ維持や設備更新費用も事欠く自治体に、カネが入ってくる。2007年には「自治体財政健全化法」が成立し、財政力強化のプレッシャーは強まっている。一方、ファンドにとっても、インフラ投資は長期にわたって安定的な収益が見込めるので、手堅い運用にはちょうど良い。

   だが、いまのところ、「国内の自治体インフラ売却例はない」(宇都正哲・野村総合研究所上級コンサルタント)。官民の役割分担をどうするか、どんな契約を結べばいいのか――前例がないので「自治体側は困惑してる」段階だという。先頃、国交省の懇談会が「民間資金の活用はきわめて重要」という前提のもと、国が契約モデル、ルールをつくるよう求める提言を出した。今後インフラ売却のためのインフラが急速に整備されていきそうだ。「民間の資金はすぐそこまで来ている」(宇都)。

   「国も自治体も破綻の危機。待っていてもお金は出てこないと、頭を切り換えていただきたい」。インタビューに登場したファンド社長は不敵な笑みを浮かべつつ――もし札束を持ってたら、それで相手の頬を叩きそうな勢いで――語った。

ボンド柳生

<メモ:自治体財政健全化法>

   地方公共団体財政健全化法。実質赤字比率などの指標をもとに、財政が悪化した自治体を「早期健全化」「財政再生」の2段階に分けてチェックする。悪化の段階がそれぞれの基準に達した場合、計画をつくり公表することが義務付けられる。総務大臣が勧告できることや「再生振替特例債」の発行に関する取り決めも記載されている。施行は2009年4月。

NHKクローズアップ現代(2008年7月22日放送)

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