映画見てこんな「痛い思い」するなんて…(イースタン・プロミス)
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<イースタン・プロミス>始めに言っておくと、これはかなり"痛み"を感じる映画だ。
冒頭で理髪師の息子がスウィーニー・トッドばりにカミソリで客のノドをかっ切るが、この他にも残忍な描写はいくつか登場する。思わず目をつぶりたくもなるが、しかしこの映画はそういう部分もきっちりと描いているからこそ、より引き立つシーンがある。
助産師のアンナ(ナオミ・ワッツ)が、生まれた瞬間に母親を亡くした赤ん坊をあやしながら涙する場面があるが、前後に非日常的なことが描かれているために、このシーンがとても暖かくて感動する。アンナがこの赤ん坊の家族と故郷を探し出そうと、死んだ母親が唯一持っていた日記を手にするが、これがきっかけでマフィアとの関わりを持つことになってしまう。ロシアン・マフィアの危険な現状を描きながらも、なんとしても赤ん坊を守ろうとするアンナがこの映画の中で救いの部分になっている。
アンナと関わっていく組織の運転手ニコライをヴィゴ・モーテンセンが怪演しているが、この役で魅せた演技こそ彼の本領ではないだろうか。静かにたたずんでいるだけでもロン毛の王より遥かに存在感がある。実際何度もロシアにまで足を伸ばし、ロシア訛りの英語も身につけ、完璧な役作りに徹したという。細かなことは残念ながら日本人の私には分からない。しかし吸い込まれるように彼の演技に見入ってしまうのは間違いない。
ニコライが浴場で一糸まとわぬ姿でマフィア2人を相手に格闘するが、この場面も実に痛い。映画を見てこんなに痛い思いをするのはめったにないだろう。しかし特殊効果を使った大作映画のアクションシーンなんかよりも迫力がある。
すべてにおいて、とてもリアルさを追求した生々しい映画だ。
ジャナ専 巴麻衣
オススメ度:☆☆☆☆