平泳ぎ北島「人と違う」所 それは 「目」だった
北京オリンピック・水泳。北島康介が平泳ぎ2種目金メダル、中村礼子が背泳ぎ銅メダルを獲得。勝利をつかんだあの瞬間は記憶に新しい。
そこに至るまでどれほどの努力・覚悟が必要か、私の想像を絶するものがあるのだろう。しかしそれは選手1人の孤独な戦いだったわけではなく、コーチとともに歩んできた共同作業だった。今回のゲストは、北島や中村を指導してきた競泳コーチ・平井伯昌。
平井が北島康介とオリンピックを目指そうと決めたのは、北島がまだ中学1年の時。いい目をしていた、というのがその理由。
「ゴーグルをつけるときを見ていたんですけど、普段の穏やかな顔からスイッチが切り替わったように違う顔をしているんですよね。ガリガリの子供から鋭い目つきをしていて。普段強そうでレースの時に弱々しい顔になるのはたくさんいるんですけど(笑)」。
目というのは自分の気持ちが正直に現れる場所のようだ。北島は当時から『勝つ』という気持ちが並外れていたのだろう。
平井の練習方法は、酸素濃度の低い高地による泳法改良だ。大会一か月前からアメリカ・アリゾナ州の高地での練習に入る。「攻め」の泳ぎを貫く、というのが彼の流儀だ。平地ですら過酷なトレーニングを高地で、体の動きにくい午前中に行う。「才能だけで成り立つようなスポーツじゃないですよね。まじめな子しか生き残ってこないですね」。
毎日、練習、練習の日々。そして大会が近づくにつれ選手にのしかかる重いプレッシャー。ほかの選手の記録に尻込みをし、自分の全力を出し切ることができなくなるケースもあるという。ハンセンが200メートルの代表落ちをしたのは北島の記録をプレッシャーに感じてのことだったという見方もできる。
それらをコーチが一歩先にたった客観的な視点で指導・管理する。メダルの輝きは師弟で積み上げてきた努力の輝きでもあるのだ。
慶応大学 がくちゃん
*NHKプロフェッショナル 仕事の流儀(2008年9月2日放送)