医者も知らない「薬の副作用」 周知が必要だ

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   年をとればどこかに不調が出ても当たり前。「年のせいかな」と思われていた症状が、実は薬による副作用だったという例が増えているのだそうだ。これはただごとでない。

   杏林大学医学部付属病院には、「転倒予防外来」というのがある。高齢者にとって、転倒はときに命取りになる。骨折から寝たきりにつながるからだ。ここを訪れた82歳の女性の例が紹介された。

他の病気と区別つきにくい

   絶えずふらつきがあって、以前にも転倒して肩を骨折していた。バランスのテストで、片足で立っていられる時間を計る。右足で4秒、左で2秒。軽い脳梗塞もあるので、そちらも調べたがなんともない。

   そこで医師は薬に注目した。女性は脳梗塞予防などで12種類の薬を飲んでいた。うちの4種類をやめてみた。すると1週間後、バランステストでは両足とも5秒以上に。歩き方もスムーズになり、家族の話では台所に立つようになったという。

   また東大病院の、やはり82歳の女性の例は、ふらつきと食欲不振の原因がわからず、とうとう入院にまでなったが、結局突き止めたのは、骨粗鬆(しょう)症治療で飲んでいたビタミンD剤だった。カルシウム濃度が高すぎたのだ。

   こうした薬の副作用は、高齢者だけに、高齢や他の病気との区別がつきにくい。しかし、その実態は、失神、胃潰瘍、幻覚など深刻なものまであるという。

   NHKが日本老年医学会と共同で行った高齢者医療の専門医へのアンケート調査でも、回答425人のうち、「薬の副作用例を扱った」との答えが71.5%もあった。多くは日常処方している薬である。それがなぜ副作用なのか。

   薬は服用して一定時間が経てば、肝臓や腎臓が排出してしまうが、高齢で代謝機能が衰えてくると、体内に滞留してしまう。さらに、長年服用している薬でも、あるときからこれが起こる。前出の東大病院の患者も、ビタミンDを10年も飲んでいた。年齢が進んで腎臓機能が落ちたためだった。

米国ではコンピューター画面に警告

   大内尉義・東京大学大学院教授に国谷裕子が「どんな薬がどんな副作用をするのか」と聞いた。

   大内教授は、抗ガン剤、睡眠薬(ふらつき)、血圧の薬(めまい、失神)、鎮痛薬(急性胃潰瘍)などをあげ、「代謝機能の衰えで、適量だったものが過量になる。また高齢で水分量が減るので、血中濃度が高くなる」という。これらは「高齢化で初めてわかってきたこと。医師もこれまで、高齢者を成人の延長と考えてきた」と。

   そこでいま、「副作用が出やすい薬のリスト」を医療の現場で活用する方策が進められている。リストには、睡眠薬や精神安定剤など45種類が載っており、各地で研修会を開いて普及をはかっている。これまでの処方を見直す手がかりだ。

   この問題で先進のアメリカは徹底していた。ピッツバーグ大学病院では、薬剤部が処方箋の全てをチェックし、高齢者の副作用が疑われる薬には、コンピューター画面に警告が出るようになっている。薬剤師はそこで患者のデータを検討し、問題があれば医師に伝えるのだ。

   大内教授は、「日本でも連携は進んでいるが、ここまでシステマチックにはいってない。これからだ」というが、課題はまだまだ多いとも。

   たしかに、薬をやめたら体調が戻った、という話はよく聞く。そのリストや知識は、医師への周知はもちろんだが、一般人にも必要なものだろう。

ヤンヤン

   *NHKクローズアップ現代(2008年10月1日放送)

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