太陽電池「技術優位」の日本 世界市場で出遅れる訳

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   シリーズの第2弾は「太陽電池」。国谷裕子が解説する。「太陽光をすべて電力に換えることができれば、わずか1時間で世界中が1年間使用する電力を賄うことができる。しかもクリーン。次世代のもっとも有望なエネルギー源といわれています」

   かつて日本はこの分野では圧倒的な優位にあった。しかし、世界のメーカートップ5で、2005年には4つを占めていたのが07年には2社になった。太陽電池の位置づけが大きく変わってきた。震源地はヨーロッパである。

スペイン政府の大胆な戦略

   スペインではすでに500基を超える太陽光発電所がある。運営には電力会社のほかにベンチャー企業が参入。6基を運営する企業の売り上げは600億円を超えるという。なぜスペインなのか。

   スペイン政府は4年前、大胆なエネルギー戦略を打ち出した。電力会社に補助金を出し、電力会社は25年間既定の値段で太陽光発電の電力を買うことを義務づけたのだ。これまで普及を阻んできた「火力発電の6倍」という建設コストを、税金を投入して乗り切ったことになる。

   「スペインには資源がない。太陽光発電を戦略的に普及させることで、将来のエネルギー問題を解決しようと考えている」と政府関係者はいう。

   ヨーロッパがリードする太陽光発電を支える太陽電池の市場は、07年には1.7兆円だったが、12年には6.5兆円になるとみられる。これに、中国、インドなどの企業が続々と参入。ナイジェリア、アラブ首長国連邦など産油国も加わる。「石油は有限、太陽は無限」というのだ。

   日本政策投資銀行調査部の清水誠は、「ヨーロッパの補助金政策が、市場の構造を大きく変えた。これまで、研究・試作レベルにあった太陽光発電を、一気に大量生産時代に移行させた。そこで、いかにパネルを安く作るかになるが、スケールメリットにスピードも必要になった」という。

   国谷は、「技術力がある日本企業に出遅れ感があるのはなぜ?」

   清水は「大量生産という市場構造の変化に対応できなかった」とみる。「急成長しているドイツ、中国、インド企業に共通しているのは、世界規模で投資マネーを集めて一気に大きくなったこと。足りない技術は他のメーカーとの連携とか、日本企業とは戦略が異なる」。

日本企業も動く

   追い上げは急だ。3年前新規参入したインドの「モーザーベア社」は、もとはDVDのメーカーだったが、未経験の太陽電池に3年間で3000億円以上を投資、一大メーカーに。近く稼働する新工場は、米メーカーから丸ごとノウハウを買った。機械一式100億円、技術者100人を海外から集めた。資金力と早さで、他を圧倒した。

   ラトゥル・プリ社長は36歳だが、「太陽電池の将来性は50兆円規模だ。さらに投資して2年後には世界トップ3になる」と断言する。

   日本企業も動いている。昭和シェル石油は昨2007年、宮崎に太陽電池工場を建設すると発表。ヨーロッパや国内販売を目指す。今後1000億円を投じ、5年以内に経営の柱にしたいという。「石油は横ばいからやがて減る」(新美春之会長)と。

   半世紀の実績があるシャープは、新たな戦略を打ち出した。自ら発電所を建設して電力会社になろうというのだ。まずはイタリアで、また、関西電力との協力で大阪に。町田勝彦会長は、「太陽電池は油、工場は油田」だという。

   技術はトップにありながら、世界市場での「出遅れ感」が気になる。社会全体が太陽電池の将来性をどれだけ認識しているか、もあるかもしれない。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2008年10月22日放送)

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