「水メジャー」企業に日本は屈するのか

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   「日本の『技術力』を活かせ」シリーズの第3回は「水ビジネス」。タイトルを一見したときは、スーパーの店内に「××天然水」が大量に並ぶ様から、日本の圧勝だろうと思った。が、事態は違うことがよくわかった。

自治体に代わり「水管理」

   海水や生活排水を浄化する技術では確かに優れている。番組が見せる福岡県の施設では玄界灘の海水を浄化して25万人の飲み水をつくるという。塩分などの成分をほぼ完全に取り除くフィルターみたいな「特殊な膜」が使われているのだ。半導体を洗浄するための「超純水」をつくる技術をもとに開発された膜は、日本が世界の60%のシェアを誇るそうだ。水ビジネスの心臓ともいうべき部分の技術では日本が世界のトップに立っているのである。

   ところが、経済産業省の試算によると、この膜の市場規模は、水ビジネス全体のわずか1%にしか過ぎない(2025年段階の予測)。ここで登場するのが「水メジャー」と呼ばれるグローバル企業。浄化施設、給水所などの建設から、工場や一般家庭への給水、料金の徴収、海水、排水の処理までの管理・運営を、国や自治体に代わって一括して取り仕切るのが水メジャーだ。すでに、世界50か国以上で事業を展開、2億3000万人の暮らしに欠かせない存在に成長しているという。

   番組が紹介するフランスのスエズ社は15年で事業規模を3倍以上にしたといい、もう1つのフランスメジャーと合わせて、世界の水ビジネスの3割を占めるそうだ。一度システムをつくれば毎年、安定した収益を得ることができ、景気に左右されないのが水メジャーの強み。ただ、突然、値上げや撤退を行うなど、そのあり方が論議を呼んでいる一面もあるらしい。

「水制する者は世界制する」

   いずれにしても、温暖化による渇水や水質汚染、人口増による水問題は深刻で、「国連では2025年までに18億人が水不足に直面すると推計しています」(国谷裕子キャスター)。

   そんな状況からシンクタンクの所長は「水は第2の石油になりうる。水を制する者は世界を制する」と語る。霞が関も、日本の水ビジネスの将来に危機感を募らせて、ようやく動き始めた。この9月、膜メーカー、商社、電機メーカー、建設会社を集めてオールジャパンの企業連合体を結成、3年で日本版水メジャーの育成を目指すことにしたのである。

   経産省の環境指導室長は「これがラストチャンス。今のタイミングで出ていかないと厳しい」と言う。スタジオゲストの吉村和就・元国連環境審議官は「日本の水行政は、上水道は厚生労働省、下水道は国土交通省という具合に6つの省庁がバラバラ。省庁を束ねるような取り組みがなければ海外の水メジャーに対抗できない」と指摘する。さらに吉村は「いい技術さえあれば白馬の王子様が買いに来るというのは誤解。世界に情報を発信し、ビジネスを展開するなどの積極的な姿勢が必要だ。日本には100年以上にわたる水に関する経験、ノウハウがある。21世紀は水の時代、世界に貢献したい」と結んだ。

   24時間、蛇口をひねればいつでも飲み水が出るお国柄のせいで、日本は立ち上がりが遅かったのかもしれない。果たして先行する水メジャー勢につけ込めるだろうか。

アレマ

NHKクローズアップ現代(2008年10月23日放送)

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