不思議なホラーと「いかにも」なヒロイン(アイズ)
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<アイズ>幼い頃に失明したシドニーは、姉の強い勧めで角膜手術を受ける。おかげで何十年かぶりに視力を取り戻すが、盲目だった月日の間で養った聴覚や嗅覚の方が優れているシドニーにとって、視力は一番信用ならないものであった。初めて見るものばかりで戸惑いを隠せずにいたが、見えるようになったのは現実のものだけではなく、他人には見えない不思議な現象までもが見えるようになっていた。
目が覚めたらいきなり部屋が火事になっていることもあれば、マンションの廊下にはいかにもといった感じの不気味な少年が何度も現れ、エレベーターの中では首を吊って死んでいるはずの死体がだんだんと近づいてくるといった現象が次々に起きていく。ワンシーンだけで見ると不気味な箇所もあるのだが、切り替わりが早くて効果音ばっかりの過剰な演出が逆に気味悪さを払拭してしまった。おかげでジワジワと迫り来る恐怖なんてものはこれっぽっちも感じられない不思議なホラー映画に出来上がっている。
米ホラー映画のヒロインは強い。恐ろしい殺人鬼や怪物相手に初めはキャーキャー言いながら逃げ惑っていても、逃げ切れないとわかれば果敢に立ち向かっていく。この映画のヒロインもそうだ。殺人鬼こそ出てこないものの、初めは自分にしか見えていない怪奇現象に怯えていただけだったが、最終的にはこの原因を自ら突き止めに行くだけでなく、他人まで救っているのだ。
一概には言えないが、強い(+かわいい)ヒロイン像と、無事に解決してハッピーエンドを迎える結末は、ハリウッドでホラー映画を作るにあたって譲れないものなのであろうか。この映画はもともとタイの『the EYE 【アイ】』のリメイクであるが、結局はいかにもハリウッドらしい映画になってしまった。
ジャナ専 巴麻衣
オススメ度:☆☆