どうしてここから硫化水素が? 「知られざる危険」と対応策

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   安い、加工しやすい、耐火性、防音性に優れていることから住宅の天井や壁に広く使われている石こうボード。従来、安全と思われていた石こうボードに実は危険が潜み、誤った処理で有毒ガスが発生、死者もでている。番組はこの「知られざる危険」を取り上げた。

石こうボード廃棄の規制強化

   松江市のホテル『東横イン松江駅前』で今年5月、地下配管室で発生した硫化水素が漏れ、8人が病院で手当てを受ける騒ぎがあった。

   警察で調べた結果、地下配管室に経費節減のために不法投棄された石こうボードが雨水などと化学反応を起こし、有毒ガスの硫化水素が発生したことが分かった。配管室からは致死濃度の3倍近い2000PPMの硫化水素が検出された。

   2000年には福岡県筑紫野市の産廃処理上で事業所作業員3人が硫化水素中毒で死亡する事故も起きている。

   従来、化学反応が起こらない、安全な廃棄物と思われていた石こうボードに、なぜ硫化水素が発生するのか?

   福岡の死亡事故をきっかけに、遅ればせながら国が発生メカニズムの研究を行った結果、(1)水分が多い(2)無酸素状態(3)有機物がある(4)摂氏30度前後の保温が保たれている(5)硫黄分がある、という条件があれば硫化水素が発生することが分かった。

   しかも、化学反応を起こさないとみられていた石こうボード自体に有機物の澱粉が含まれており、硫化水素の発生要因になっていた。

   これによって国は2年前の06年、石こうボードの廃棄について規制を強化した。

   それまで金属やガラス処理する処分場へ持ち込まれていた石こうボードを、常に空気が入り、水がたまらない施設のある管理型処分場への廃棄するよう義務付けたのである。

   ところが、この規制強化によって、石こうボードの不法投棄が絶えないという新たな問題が発生した。

「空気穴」で防止可能

   廃棄が義務付けられた管理型処分場は現在、全国に90か所設けられているが、石こうボードの廃棄が多い東京や大阪、埼玉など大都市には全くない。

   このため処理コストや輸送コストが跳ね上がり、解体業者が値上がり分を負担しているのが現状という。

   不法投棄が後を絶たないのはそのためだ。この不法投棄によって、これまで埼玉、静岡など10県で、硫化水素の発生が確認されている。

   こうした不法投棄場所で「(硫化水素が)発生しないような対策を取るのは可能なのでしょうか?」と国谷キャスター。

   これに対し国立環境研究所の井上雄三が「まず、モニタリングし監視しながら、5つの発生条件のうち、どれかを取り除けば発生は防げる。排水溝や空気穴を設けた施設をつくれば防止は可能だ」という。

   一方、今後期待されるのは、硫化水素を発生させない石こうボードの開発。すでに石こうボードメーカーには、硫化水素の発生を抑える酸化鉄を原料に加えた石こうボードの新製品を開発したところもある。

   ただし、酸化鉄の費用などコストアップから販売価格が1割ほど高くなるのは避けられない。現在の建築不況の中では、安い韓国製品が流入し価格競争に勝てなくなる恐れがあり、積極的な売り込みを躊躇しているという。

   規制強化すれば不法投棄が増える。ひとたび不法投棄から硫化水素が発生すれば、その対策の費用と手間は膨大なものになるという。といって新製品を開発すれば外国品との価格競争に負けてしまう。

   まるで出口が見えない迷路に入ったよう。市場原理に任せているだけで安全、安心を確保するのは、もはや限界にきつつあるということか……。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2008年12月10日放送)

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