「逆回りの人生」で見えた大切なこと 映画と俳優にありがとう (ベンジャミン・バトン/数奇な人生)
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<ベンジャミン・バトン/数奇な人生>80歳で生まれ、歳を取るにつれて若返っていくベンジャミン。この物語は167分という時間の、ある特殊な人生を歩んだ男の一大叙事詩である。
ベンジャミン(ブラッド・ピット)が歩んだ数奇な『人生』そのものがストーリーなので、映画としての派手さや、メリハリのある展開はない。長い上映時間に耐えられるかと不安になるかもしれないが、彼の人生を追っていくうちにそんな心配はなくなるだろう。
生まれてから死ぬまで、ベンジャミンの成長過程は順序良く描かれる。我々はそれを最初から追うことになるのだが、彼が遭遇したさまざまな状況を思い返すと、いつのまにか彼に感情移入する。そしてまわりが年を取っていく中、ただ一人若返っていくベンジャミンを見ていると、どうにも切ない気持ちになってしまうのだ。
人間なら誰しも成長していく上で出会いや別れを経験し、知識を身に付け、さまざまなことを体感していく。しかし誰とも違う人生を歩んでいるベンジャミンにとってみれば、そんな当たり前のことが尊いものとなる。誰かと共に時間を共有出来ることの喜びと、今しかない身近な幸せに気づかせてくれるようだ。
「時は金なり」とはよく言うが、無駄遣いをしても金は稼げるが、時間はそうはいかない。映画の冒頭で時計職人が逆回りをする時計を作るエピソードがあるが、これがとても印象的である。誰もが一度は過去に戻ってやり直したいと思ったことがあるだろう。しかしそんなことは不可能だからこそ、人生という時間の積み重ねを大事にしていかなければならない。この映画には俳優たちの素晴らしい演技とともに感謝する。
ジャナ専 巴麻衣
オススメ度:☆☆☆☆