麻生首相の「苦境」伝える 1番うまい見出しはコレ
今日の朝日新聞の一面に「景気底打ち 政府宣言」と出ている。これほど、庶民の生活実感とかけ離れたものはない。ユニクロの980円のジーンズが売れ、5円、10円安い店を求めて、主婦たちは血眼になっているというのに。4月の失業率は5%に達し、有効求人倍率は過去最悪だというのに。学生の就職は、どこの学校も苦戦しているというのに。年間3万人を超える自殺者が、今年はもっと増えそうだというのに。
そうなってしまったのは、麻生首相がダメだからなのか。自民党政権だからか。日本の政治そのものがダメなのか。
どうやら、今のところは、麻生だからダメなのだということで落ち着きそうだ。
橋下府知事の大臣兼任説
鳩山総務大臣更迭で、共同通信の調査では、支持率が17.5%、不支持率は70%を超えた麻生首相の断末魔を、各誌、どう切ってみせるのか。編集長の腕の見せ所でもある。
現代は、「接戦から大差に 『鳩山圧勝 自民大敗』の衝撃」。その通りなのだろうが、イマイチインパクトに欠けるタイトルである。
ポストは、「橋下徹『地方分権特命大臣就任』の甘い罠」。ちょっぴり変化球である。内容は、都議選で負けると、麻生下ろしが始まるが、ポスト麻生の一番手が、石原伸晃だというのだ。それをつないでいるのが中川秀直元幹事長と菅義偉選対副委員長で、彼らがやっている勉強会のメンバーはこういっているというのだ。
「公共事業の自治体負担金の廃止を強く訴えてきた橋下氏は、何度陳情しても動かない麻生総理に怒っている。麻生を降ろして伸晃総理の下で地方分権、霞ヶ関解体を政策に掲げ、橋下氏に大阪府知事と地方分権担当特命大臣を兼務してもらう。東国原知事を加えたトロイカで応援に回ってもらえば新生自民党をアピールできる」
議員は、選挙に落ちればサル以下に成り下がるそうだから、必死なことはわかるが、あまりにも国民を蔑ろにした人気取り人事では、もはや国民は騙されない、と思うのだが。
朝日は、常連ライターで元鳩山邦夫議員秘書だった上杉隆氏を使って「政権崩壊全情報 鳩山邦夫総務相『罷免』の内幕」を書かせている。
鳩山氏が罷免後、「西川さんが謝罪すべきは国民に対してであって、私ではない」と語ったことを取り上げ、「『情と理』を尽くしたと信じ、麻生を信じてきた鳩山にしてみれば、麻生の態度は心底ショックだった」と、鳩山氏の無念な胸の内を解説する。
文春「麻生太郎の『店じまいセール』」
さらに、今回の騒動は、鳩山を応援する読売新聞と、財界、西川応援団の日経新聞の代理戦争だというのだ。
その証拠に、鳩山辞任当日の日経新聞は、朝刊で「首相、西川続投で調整」といち早く報じ、夕刊の締め切りが過ぎていた時点で決まったはずの大臣後任人事を、夕刊で「後任、佐藤勉氏で調整」と打ったのだ。
読売の渡辺恒雄氏の初仕事は、初代自民党総裁の鳩山一郎の番記者だった。鳩山邸で、幼い鳩山兄弟を背中に乗せて走る「馬」になったこともあるそうだ。
次のページは、「日本郵政西川善文社長は『正義』に反する」。それ以外にも、「気をつけろ! 再び検察が民主党を狙っている!」と書き、朝日の山口編集長は、民主党の応援団の立場を鮮明にしたようだ。
新潮は、「自民党『下野前夜』物語」として、ワイドを組んでいるが、目新しい話はない。文春は、「総力取材 鳩山更迭の夜、寿司屋借り切りで上キゲン! 余命1ヶ月の麻生首相」。この特集のタイトルよりも、都議選の候補者を巡礼して回る麻生首相のにやけ顔を撮って、見出しに「麻生太郎の『店じまいセール』」と付けた。うまい!
気になるのは、ここでも上杉隆氏を起用して「読売vs日経メディアウォーズ」を書いてもらっているのだが、あれあれ、これでは、朝日と同じではないか。
上杉氏はフリーのジャーナリストだから、求められればどの媒体でも書くのは仕方ないとしても、編集者は、朝日を読んでいないのかね。彼ほどのライターなら、違うテーマでも十分書けるネタをもっているはずなのだから。
今週の注目記事は、現代の「直撃 足利事件 冤罪を作った『警察官・検事・裁判官』の実名」と、同じ内容だが、朝日の「菅家さんを『抹殺した』警察・検察・裁判官」の2本。
裁判はこれからだから、完全な「冤罪」と決まったわけではないが、菅家さんを、卑劣な取り調べで自白させ、未熟なDNA鑑定を根拠に、無期懲役に処した連中はどんな人間だったのか。彼らはいま何を思っているのか。問題提起としては、意味のある記事だと思う。ぜひご一読を。