スタイリッシュ＆豪華俳優 なのに置いてけぼり気分（ザ・スピリット）

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   ＜ザ・スピリット＞『シン・シティ』でロバート・ロドリゲスと共同監督を務め、アメコミ界の重鎮であるフランク・ミラーが、今回は1人で指揮を取った。さて、その映画とは……！

   映画は全編に渡り基本モノクロ調だが、印象付けるように所々色彩を付けている。だから背景や人物のトーンが非常にシャープに見えて、とてもスタイリッシュな映像なのだ。おまけに登場するキャラクターたちはとってもハードボイルド。初めてこの映像を見る人はきっと新鮮な感じがするだろう。

   だけどこれ、ちっとも新しくなんかない。『シン・シティ』をご覧になった方ならすぐに気づくだろう。ただの二番煎じだと。

   前回フランク・ミラーはあくまでも監修の立場で監督業を引き受けていたが、それで味を占めたのか。はたまた今度は1人でやってみたかったのか。どちらにせよ、同じような映画を2度撮ってどうするのだ！

   ビジュアルから察しがつく通り、今作も原作はアメコミなわけだが、この原作をご存じだった方はどのくらいいるだろうか。大のアメコミファンは別として、たいていの人は知らなかっただろう。しかし一つひとつのシーンやキャラクターたちを、いかに原作通りに映像化できるか、ということにフランク・ミラーはこだわっているように思える。「見て見て、すごいソックリでしょ!?」…と原作を知らない我々に見せつけられても、そんなことは正直どうでもいい。それよりもむしろ、原作を知らなくても楽しめる映画を作ってくれた方が良かったんだけど……。観客のターゲットが絞られ過ぎて、なんとなくこの映画を見に来た人は置いてけぼりを食ってしまう。

   新鮮さは無いがこのスタイリッシュな映像と、あとはムダに豪華な俳優たちが唯一の見所か。サミュエル・Ｌ・ジャクソン、エヴァ・メンデス、スカーレット・ヨハンソンの3人が、クレイジーに、そしてセクシーにそれぞれキャラを演じている。

   だが主人公のスピリットを演じたガブリエル・マクトに華が無いこと……！ 例えるなら『デアデビル』のベン・アフレックくらい華がない。せっかくフェルトハット被り、ネクタイなびかせて街を颯爽と駆けるハードボイルドなのに……。＜テレビウォッチ＞

巴麻衣

   オススメ度：☆