2018年 7月 19日 (木)

閉ざした心に響く音 「映画館で」勧める理由(扉をたたく人)

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   <扉をたたく人>『バーン・アフター・リーディング』や『Shall We Dance?』など、名脇役と知られるリチャード・ジェンキンスの俳優生活40年目にして初の主演映画。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほどの熱演に注目。

   妻に先立たれ、仕事への情熱を失い、心を閉ざして生きる大学教授ウォルター(リチャード・ジェンキンス)。ある日、出張でマンハッタンの別宅に行くと見知らぬ男女が住んでいた。知人に騙されて住んでいたという彼らは、シリア出身のジャンベ奏者のタレク(ハーズ・スレイマン)と、その恋人でセネガル出身のゼイナブ(ダナイ・グリラ)。行き場のない2人を放っておくことができず、ウォルターは彼らをしばらく住まわせてやることに。しかし、ある日些細な誤解からタレクは警察に逮捕され、不法滞在が明るみになり、拘置所に入れられてしまう。

   舞台は9.11テロ以降、不法滞在者への取り締まりを強化したアメリカ。タイトルの『扉をたたく人』にはアメリカへの扉をたたく外国人という意味合いも込められているが、劇中、その扉は固く閉さされたままだ。

   一方、ウォルターの心の扉は徐々に開かれていく。本作では、その変化がとても丁寧に描かれている。一役買ったのが小道具として使われているジャンベというアフリカンドラムだ。ウォルターのビシッと着こなしたスーツ、その股下にはジャンベ。思わず笑ってしまうほどの組み合わせであるが、スーツを乱しながらジャンベを叩くウォルターの姿はミスマッチだから心に焼きつく。

   また、ウォルターの演奏シーンはいくつかあるのだが、その一つひとつが違った感情を表わしている。ウォルターが紳士的であるがゆえに、ジャンベの軽快なリズムは饒舌に感情を表現する。それは頭脳明晰なウォルターが、頭ではなく心でジャンベを叩いているからだろう。

   映画の中盤から登場してくるタリスの母親モーナ(ヒアム・アッパス)と、ウォルターの関係も良い。妻を亡くした悲しみから立ち直れていないウォルターは、息子を案じてやってきたモーナにより変わり始める。拘置所にいる息子タレクという存在がある分、2人の間には微妙な距離間がある。1度だけ気分転換にとウォルターとモーナはデートをして、恋に落ちそうになるのだが、「こんなことをしてる場合じゃない」という思いが2人を寸前の部分でくっつけない。この葛藤が良い味を出し、後半部分に深みを与えている。

   ラストのジャンベ演奏のシーンには度肝を抜かれた。映画はセリフではなく、アクションで語る、ということを改めて教えられたエンディングだった。ジャンベのリズムを肌で体感するためにも、映画館での鑑賞を強く勧める。<テレビウォッチ>

野崎芳史

オススメ度:☆☆☆☆

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日本ジャーナリスト専門学校
通称ジャナ専。東京都豊島区高田にあるマスコミの専門学校。1974年の開校以来、マスコミ各界へ多くの人材を供給し続けている。

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