「掴み」最高でワクワク 不可解な殺人の謎とは(セントアンナの奇跡)

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(C)2008(Buffalo Soldiers and On My Own Produzione Cinematografiche)- All Rights Reserved.
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   <セントアンナの奇跡>第2次世界大戦で実際に起きたセントアンナの大虐殺を下敷きに、黒人兵士の葛藤と心の交流を描いた作品。

   1983年のある日ニューヨークの郵便局員ヘクターが起こした不可解な殺人事件から映画は始まる。定年間近、精神状態も良好で実直な男が犯した唐突な殺人。家宅捜索の結果、ヘクターの家から長きにわたって行方不明になっていた歴史的に貴重なイタリアの彫像が出てくる。

   謎が深まる中、動機について重い口を開き始めるヘクター。

   謎を解く鍵は第2次大戦の真っ只中のイタリアトスカーナにあった。黒人だけで組織された部隊『バッファローソルジャー』の隊員として戦地に送り込まれたヘクターは他3人の兵士と共に部隊からはぐれてしまい、1人のイタリア人少年アンジェロを保護する。その後、トスカーナの村に行き着いた兵士たちは黒人差別のない地で一時の自由と平等を感じていくのだが……。

   不可解な殺人、謎の彫像、これらの要素がどう繋がっていくのか、ワクワクしながら観客は40年という月日をまたぐことができ、謎の少年アンジェロの登場で完璧に作品に引きこれまれる。掴みは最高だ。

   また、この映画、分類としては戦争映画に入り、R15指定になるくらいの激しい戦争シーンがあるにも関わらず、どこかファンタジックな雰囲気が漂う。それはアンジェロという少年の存在があるからだろう。アンジェロが『チョコレートの巨人』と呼ぶ大男兵士トレインとのやりとりは、戦争映画であることを忘れてしまうほど心温まるものだ。そのギャップがとても良かった。

   しかし、この映画の最大の弱点は主人公に力がなかった点にある。主人公が映画の発端で殺人を犯したのであれば、主人公はどうしてそのようなことをしてしまったのか、という動機を巡って作品は展開すべきだ。しかし、戦争場面に移り変わった途端、主人公ヘクターの影が薄くなってしまっている。あまりに目立たないので、途中からトレインが主人公で、発端で殺人を犯した男は実はトレインでは? でもこんなに太ってなかったし……と作品とはまったく関係のないところで混乱してしまった。トレイン、アンジェロ、トスカーナ村で出会った人物、ナチス、パルチザン、など主人公の周りの人々とそのエピソードが際立ち、主人公に魅力を感じられなかった。それにより、発端の殺人のリアリティーが損なわれてしまっていた。

   オープニングの違和感は確実に映画全体を侵食していく。エンディングで殺人事件の回収作業もつじつま合わせのようにしか見えなかった。主人公の設定、または殺人から始まる発端部分を変更すべきだと感じた。私には観客の興味をひくためだけに、ヘクターは殺人を犯したように見えてしまった。

野崎芳史

   オススメ度:☆☆

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日本ジャーナリスト専門学校
通称ジャナ専。東京都豊島区高田にあるマスコミの専門学校。1974年の開校以来、マスコミ各界へ多くの人材を供給し続けている。

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