「バガボンド」作者の挑戦 なぜそこまで苦労するのか

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   <テレビウォッチ> 先日電車に乗っていたら、友達から借りたらしいマンガを紙袋に入れて乗ってきた中学生の男の子がいた。ボロボロになったそのマンガを取り出し読み始めた。『スラムダンク』。

   言うまでもなく少年マンガの金字塔であり、1億4000万部を超える大ヒット作である。今でも広い年代層に愛されているんだと、そのとき私は感慨深く思った。

   今回のゲストは、その『スラムダンク』の作者であり『バガボンド』、『リアル』を連載中の漫画家、井上雄彦。番組では彼に密着し『バガボンド』を執筆する様子をスペシャル枠で伝えた。

   彼の1週間の仕事は決まっている。1.ネーム、2.下書き、3.筆入れ。この3つの仕事を毎週こなす。

   ネームとはマンガのコマ割、キャラクターのアングル、台詞などを決める作業。マンガの骨組みといってもいいのかもしれない。井上はこの作業を喫茶店でやる。「弱いじゃないですか人は(笑)。自分の家とか事務所では自分のスペースなので楽しちゃうじゃないですか」。自分で自分を追い込むために彼は喫茶店で作業をする。

   心が静かじゃないと書けないという井上。『バガボンド』は宮本武蔵を主人公にした物語。強い敵と向かい合い、斬り続ける武蔵。そうすることで心の弱さを克服していく。そこに井上の姿を写し、自分も心を痛める。佐々木小次郎が落人狩りに巻き込まれ、敵を切りまくる話の際に、彼は完全に苦しみのスパイラルに陥った。終わりのない苦境に立たされた佐々木と、連載に追われる自分が重なり、ついには筆をもてなくなった。そこで彼は1年間、連載を休止する。

   「もう書きたくないって思いました。紙見たくなかったりとか」

   「スラムダンクでポジティブな世界を書いて光の部分を書いて。その反対のものを書きたいと思って、自分に対して嘘のないように書くようにした結果、必然的に暗い方へ暗い方へいっちゃったんで。入り込んじゃった。影の暗い部分に自分も同化しちゃったというか」

   なぜそこまで苦労しなきゃいけないんですかね、という茂木の質問に対し

   「人を斬るところを書いてて、苦しくなったり痛くなったりしなきゃずるいような気がしたのもちょっとあります」

   登場するキャラクターと苦しみを共有することで、リアルな世界観は造られるのか。壮絶な生みの苦しみを感じた気がした。

慶応大学がくちゃん

   *NHKプロフェッショナル 仕事の流儀(2009年9月15日放送)

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