やる気ある人の意欲削がない? 農家への個別所得補償

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   <テレビウォッチ>『戸別所得補償』。鳩山新政権が農業再生の切り札として打ち出す政策だという。これまでは減反政策を農業政策の柱とし、生産量を調整してコメの価格維持を図ってきた。が、取引の自由化、コメ離れなどで米価が下落、農家の所得はピーク時に比べて5割も減少したといわれる。

   そこで、減反に参加する全国すべての販売農家に一定水準の所得を補償して力づけ、農業の再生につなげたいとマニフェストに盛り込んだようだ。来2010年度導入予定で、財源は税金。農林水産省はこの制度のために概算要求で3400億円を求めた。

所得60万が200万に

   では、1戸当たり、どれくらいの補償額になるのか。国谷裕子キャスターが、スタジオゲストの赤松広隆農水相に繰り返し質問した。「今年のいろんな生産費、米価がやがて決まる。それらを計算した上で確定したい」と農水相は答える。

   実は、新潟県でも国と同じようなしくみを考えているのだそうで、番組は、4haの水田を持つ、ある専業農家をシミュレーションしたケースを紹介する。今までは、(販売費+減反補助金)の収入が622万円、(経費)が562万円。年間所得は622万円-562万円で60万円だった。所得補償が導入されると、経費に労働費が加算される。労働費は水田面積によって決まり、この農家の場合は200万円。で、622万円-(562万円+200万円)=-140万円と計算されて、140万円が補償されるという。所得が3倍以上になるわけで、「期待できるし、努力のしがいがある」と、この人が笑顔を見せるのもムリはない。

   しかし、いい話ばかりではない。他の農家に農地を貸していた農家が、貸すのをやめて自分で作ると言い出している、と番組は説明する。所得補償によって、その方が所得が増えるのだ。また同じ理由から、農地を集約化して効率的生産をめざしてきた専業農家のグループから、離脱したいという人も現れているという。

3400億円要求の根拠は?

   「やる気のある人たちの意欲を削ぐ制度にならないか?」と尋ねる国谷に、農相は「そうならないように私どもが誘導しなければならない。大規模化して効率的に集約農業をやって行くことがいいに決まっている。やがて、そういう流れになる」と述べた。

   国谷がさらに「価格を維持しながら所得補償を税金で補うと、消費者は価格下落の恩恵を受けられないのでは?」と質すと、農相は「安心、安全、安定的な食料の供給ができるようにするためには、自給率を上げなくてはならない。そのことは国民の皆さんが必ず理解してくれると思う」とした。

   民主党のマニフェストにありがちな傾向だが、<戸別所得補償>も生煮えの感を免れない。1戸当たりの補償額が曖昧なのに3400億円の予算要求をするのも疑問だし、国谷の指摘するように検証すべき課題も少なくない。制度の先行きは不透明な気がする。

アレマ

   *NHKクローズアップ現代(2009年10月22日放送)

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