息子の潔白信じる母 その愛は美?腐敗的?(母なる証明)

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<母なる証明>漢方薬店を営む母(キム・ヘジャ)は、知的障害を持った一人息子のトジュン(ウォン・ビン)のことを仕事中でも目が離せないほど溺愛している。この親子は貧乏ながら、互いに互いを絶対的に必要とし、慎ましく片田舎の小さな町で生活をしていた。

   が、ある日、町で女子高生が殺され、その死体が空き家の屋上からぶら下がる奇怪な事件が起き、親子は思わぬ形で引き離されてしまう。トジュンが殺人の容疑で逮捕されてしまうのだ。無実を信じて疑わない母は、事件の「真相」に向かい行動を開始していく。

ヒッチコックを彷彿と

   だだっ広い草原で後ろを何度か振り返りながら、遠くから徐々にキム・ヘジャがカメラに近づき、怪しげな音楽に乗せて、怪しげな踊りをみせる冒頭のワンカットに言葉を封じられた。笑っているか、泣いているかも判別できないキム・ヘジャの表情を口を開けながらぼんやり眺め「ああ、映画だ」という感覚を覚えた。

   愛する人の無実の潔白の証明というやりつくされた物語の構造に特別性を与えているのは、「韓国の母」と謳われるキム・ヘジャが創り出した「母親像」だろう。息子に対する「愛」は言葉が持つ美しさとはほど遠い。盲目的であり、偏狂的で、何か臭いのする愛だ。その臭いは腐敗的でいて、性器のような臭いのようで……ただ当事者にとっては「純粋な愛」なのだ。愛とは身勝手なもので主体的なものだ。

   ポン・ジュノ監督の視点は冷徹さと狂気を合わせ持ちながらも、冷静に、極めて冷静に第3の視点から見ている。脇役から何でもない店の店員までもが、おぞましいほどの存在感を持ち、「常に何かが起こりそう」な恐怖が全体に充満している。恐怖を作り出す演出と、物語の兼ね合いは天才的で、ヒッチコックを彷彿とさせる。

   しかし、この映画は一体何が解決したというのか、一体何が救われたというのか。何も解決しておらず、何も救われていない。後味が悪い作品の部類に入るのだろうか? よく解らない。だが、何なのだろう。眩いほどの落ちかけた陽に照らされたバスの中の、あのラストシーンに溢れる高揚感は。一体何なのだ、あれは?<テレビウォッチ>

川端龍介

オススメ度:☆☆☆☆

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日本ジャーナリスト専門学校
通称ジャナ専。東京都豊島区高田にあるマスコミの専門学校。1974年の開校以来、マスコミ各界へ多くの人材を供給し続けている。

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