ドラッカー読みのドラッカー知らず 「いい会社」の試験紙とは

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<テレビウォッチ> 『経営学の神さま』『現代の哲人』と呼ばれたピーター・ドラッカー。2005年に惜しまれてなくなられたが、日本で今、性別や世代を超えて甦っている。

いまブーム

   書店に積まれたドラッカーの書籍がベストセラーになり、雑誌が特集を組むなど、脚光を浴びているのだ。今回はスタジオに、ドラッカーの著書の翻訳で知られる上田惇生とドラッカーの大ファンという糸井重里をゲストに迎え、森本健成キャスターが『なぜ今、ドラッカーなのか』を話し合った。

   1909年にオーストリアで生まれたドラッカーの思想は、激動の時代に生きた生涯と深いかかわりがある。

   世界恐慌やヒットラー・ナチスの台頭を目の当たりにしたドラッカーは『イデオロギーや利益の追求では人々を幸せにできない』と考え、社会や組織はどうあるべきかを追求し始める。

   その後、アメリカに渡ったドラッカーは、繁栄を謳歌するGMなどの巨大企業に注目し、よりよい社会を築くには組織の運営やマネジメントが必要不可欠であると考え、研究に専念した。

   そして世界で初めて、組織をいかに運営すべきかを体系化。そのあり方を提唱し続け、組織の中で人の能力を引き出す多くの名言を残した。

『人こそ最大の資産』『真摯なくして組織化なし』『利益は目的ではない』『強を基準に据える。組織とは人間の弱みを中和し、同時に人間の強みを成果に結びつけるための特殊の道具である』

   ところで、日本で巻き起こっているブームに火を付けた青春小説が今人気を集めている。タイトルは「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」。

   代表作『マネジメント』を分かりやすく解説し、24万部もの大ヒットを記録している。

きっかけはブーム

   そのドラッカーに魅せられたきっかけをドラッカーが著者から聞いたら苦笑するに違いない。インターネットのオンライゲームがきっかけというのだから。

   著者は岩崎夏海。そのゲームとは、見知らぬ18人の人間とチームを組み、岩崎がリーダーとなって敵と戦う内容。

   しかし、18人のなかにはゲームを始める時間に遅れたり、互いにミスを批判したりでケンカが絶えず、人間関係は悪化するばかり。

   岩崎は、問題児に頭を悩ませ、コイツさえ居なければうまく行くのにと怒っていた時、ドラッカーの言葉に出会った。『人は問題を起こす、費用であり脅威である。しかし、人こそ最大の資産である』(『マネジメント』)だった。

   そこでメンバーの使用法を見直し、目立ちたがり屋で問題を起こすが、積極性のある1人に注目し、切り込み隊長に任命。無口で存在感は薄いが、約束を守る1人をサブリーダーに抜擢した。

   結果は上々、チームは常勝軍団に生まれ変わったという。

   キャスターの森本が「どういうふうにご覧になりましたか?」に、糸井は次のように答えた。

「ドラッカーが言いたいのは、横の人に勝てという話ではなくて、前を向けという指示しかしていない。歩く先の道を教えてくれている」

   また上田も「ドラッカーは『人こそ最大の資産である』とシンプルに、誰でも納得するようにスーッというが、読み手は『人だけが最大の資産である』と読むべきです。その重みをどれだけ受け止めるかは人それぞれ。ドンピシャ受け止める人もいるんです」

   また、ドラッカーは良い組織かどうかを見極めるために、次の3つの質問を用意している。

『会社で敬意が払われているか』『仕事上の能力を高めようと思った時、会社は応援してくれるか』『あなたが貢献してくれることを会社は知っているか』

   上田は「あなたの会社はどの程度のものかを聞いている実に恐ろしい質問です。会社がいか程のものか、どれだけ人を大事にしているかを知るリトマス試験紙みたいな質問ですよ」

   世間の批判をよそに、バッサバッサと派遣切りを行ない、正社員まで切り捨てている大企業はさぞかし耳が痛いだろう。

   そんな組織に手厳しいドラッカーが、今ブームになっているわけについて糸井は「成長を創り出すということは希望を創り出すことですから、これだけ暗い話ばかりだと希望につながるものが読みたいのではないかな……」と。

                     

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2010年3月17日放送)
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