この曲の誕生バンザイ 「サンボ」近藤らの息呑む演奏(ソラニン)

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(C)2010浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治
(C)2010浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治

<ソラニン>ソラニン評2本目。主人公・井上芽衣子を宮崎あおい、恋人の種田を高良健吾が演じる。今作で役者デビューを果たしたサンボマスター近藤洋一のコミカルな演技にも注目。

   OL2年目の井上は、仕事にやりがいを感じることもなく、平凡な生活が自分自身をすり減らしているようなやり場のない焦燥感に駆られていた。同棲中の恋人、種田は大学卒業後も定職には就かず、アルバイトをしながら学生時代の仲間とバンド活動を続けている。といっても、月2回、スタジオで練習するだけの習慣的なものだ。

「原作そのまま」の安直

   「会社、やめちゃおうかな」。人間関係に疲れた芽衣子の思わず出たそんな呟き。種田の優しい言葉に背中を押されるように芽衣子は会社を辞め、再び音楽の道を目指した種田のサポートを始める。種田はバイトを辞め、曲作りに専念し、仲間と共に新曲『ソラニン』を完成させた。そのCDをレコード会社やライブハウスに送るが、反応はいまひとつ。それを機に種田はミュージシャンの夢を完全に諦めようとするのだが……。

   映画の構成やセリフ回しは原作を表面的になぞったものだ。全2巻の単行本に対し、1巻=約1時間とストーリーのペース配分もほぼ忠実に再現。漫画の構成をそのまま映画のシナリオに直すのはあまりにも安易で、それにより退屈な印象を与えている。

   また、原作では黒いコマに白字で書かれた芽衣子の独白部分の多くをそのままナレーションとして使用している。人物の心情表現はナレーションで処理するのではなく、セリフや芝居で見せなければ、観客の心には響かない。漫画をなぞるだけの演出やシナリオは原作に漂う独特の匂いまでをも消してしまっていた。

   ただ、音楽は素晴らしい。タイトル曲『ソラニン』はASIAN KUNG-FU GENERATIONが原作の中の歌詞に曲をつけているのだが、この曲が生まれただけで映画化した価値はあったと思う。映画のラストでその曲を演奏するのだが、演じ手である宮崎あおいや近藤洋一、桐谷健太の迫力ある芝居に息を呑むシーンとなっている(サビの部分で回想シーンが入るなどせっかくの芝居を編集で台無しにしてはいた感はあったが……)。

   『音』の表現が加えられることで、原作の持つ世界観をより具体化する、それは原作モノ映画の最大の魅力のひとつであり、映画『ソラニン』でも成功していた。ただ、漫画はそれ自体が表現物であり、決して絵コンテではない。映画には映画の絵コンテを用意するべきであり、映画的な表現が必要なのだと思う。

野崎芳史

オススメ度:☆☆
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