2024年 4月 27日 (土)

エイリアンよりグロテスクな人間の差別観。残念!斬新な発想が生かし切れていない 「第9地区」

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(C)2009 District 9 Ltd All Rights Reserved.
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第9地区>突如、南アフリカの上空に現れた謎の巨大宇宙船。それに乗っていたのは、他の惑星から地球にやってきた、紛れもない「エイリアン」たちであった。自分たちの惑星に戻れなくなった彼らは、政府によって作られた「第9地区」と呼ばれる場所に住むことを命じられ、近隣の住民たちからは隔離されていた。劣悪な環境の「第9地区」は、次第にスラム化が進み、彼らは新たな強制収容所への移住を余儀なくされていた。製作は「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャンクソン、脚本・監督は新人ニール・ブロガンプが担当。

宇宙人のごみあさり

   今まで見たことのない、新しい発想で撮った作品。まずそんな印象を受けた。ドキュメンタリーのような仕上がりで、テンポよく進むストーリーは、映画の中にすぐに感情移入できる。冒頭から、「エイリアン」たちがごく普通にいるのが当たり前で、「第9地区」でごみあさりをする姿などが、テレビレポーターによってブラウン管から伝えられる。あまりにも現実離れしすぎた内容だと感じたが、なにかそこにリアリティのようなものも感じた。それは相手が宇宙人でなく、たとえ人間だったとしても起こりうる事態だからなのだろう。

   作品全体を通して見ると、SFアクション作品、または「ツッコミどころ」の多い映画であるといえる。「エイリアン」たちの優れた身体能力や武器の威力は、人間の想像を絶するものなのに、なぜか彼らが人間によって管理されていることや、彼らの好物が牛の肉とゴム、そして猫缶ということなどだ。未知の生物や宇宙人の類が出てくる映画は多く存在するが、この作品ではまず、南アフリカのアパルトヘイト政策を彷彿とさせるような、「エイリアン」に対する人間たちの扱いに注目した。「エビ」などと差別的に彼らを見ながら、武力行使で言う事を聞かせ、管理する人間たち。そんな扱いを受けるグロテスクな「エイリアン」である彼らが、最初は怖いものに見えたが、なんだか不憫で、見れば見るほどに不思議と愛着がわいた。

   ただ残念なことは、この映画の見所であろうシーンが、すべて「どこかの映画にあったなぁ」と感じてしまうほど類似している点だ。「新しい発想」「新しい観点」からなる映画をつくったとしていたら、発想が面白かっただけに、そこにももう少し工夫が欲しかった。

PEKO

   オススメ度:☆☆☆

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