「普天間の迷走」鳩山すべて計算ずく―ポストの深読みホントか
今週火曜日(5月11日)に「新党改革」の舛添要一氏に会った。彼とは東大の助教授時代からの付き合いだが、自民党離党、新党結成で話題の人となり、さっき徳島県から帰ったばかりだと、さすがに疲れた様子だが、鋭い目つきと精悍さは相変わらずだった。
「思ったように舛添ブームが起きていないようだが」という質問にも、いやな顔を見せず、丁寧に答えてくれた。
彼は首相はエリート中のエリートでなければならない。「賤業」と見られている政治を「貴業」にしなければいけないと、常々いっている。
また、田中角栄以来の金権体質を根強く持つ小沢一郎幹事長への嫌悪感を隠さず、自らは、小沢よりもっとラジカルで強力なリーダーシップを持ったリーダーになると意気軒昂である。
「元奥さんの片山さつきさんが、貴方のことを批判していますが」という問いにも、「優雅なる無視です」と動じなかった。
参議院選挙では、比例で1000万票、10議席獲得を狙う。だが、彼は声をひそめて、小沢は間違いなく衆参ダブル選挙を狙っている。いま2人区に2人の候補を出しているが、それは、いつでも衆議院選のほうへ回せるからだ。自民党はそれに気付かないし、体制ができていないから、そうなれば壊滅的な打撃を受けると囁いた。
水曜日には、『ニューヨークタイムズ』のマーティン・ファクラー東京支局長からインタビューされる機会があった。その際、普天間基地移設問題で迷走する鳩山民主党政権をどう見ているのかを聞いてみた。
彼は「アメリカはイランやアフガン、北朝鮮問題で忙しくて、日本のことは二の次。鳩山首相への信頼度は残念ながらほとんどない」と、言葉はやわらかいが、さらりと切り捨てた。
では、沖縄を含めて、日本中が米軍基地はいらない、日米安保条約を見直そうとなり、日本政府が申し入れたら、アメリカはどうするのかという問いに、「そうしてくれたほうが話は早い。いつでも、すぐにアメリカは日本から出て行く。アメリカの多くの国民は、なぜ日本をアメリカが守らなければならないのかと思っているからだ」と、私の目をじっと見つめていった。
衆参ダブル選挙の現実味
前書きを長々と書いたが、今週の週刊誌のほとんどが、連休中に沖縄を訪問した鳩山首相に、最後のダメ出しをしている。「かくして鳩山政権は終わった」(現代)、「『鳩山幼稚園』の廃園準備」(新潮)、「鳩山総理を追放せよ」(文春)、「鳩山官邸はあらかじめ崩壊していた」(朝日)
その中でポストは、鳩山首相が普天間の移転先として考えているのは、徳之島でも辺野古桟橋案でもなく、第1案は、07年から戦闘機の日米共同訓練が行われている宮崎県の新田原(にゅうたばる)基地。第2案は、大型滑走路を備えている鹿児島県の鹿屋(かのや)基地だというのだ。そして、これまで優柔不断に見せいていたのは、鳩山首相の計算ずくではなかったかと深読みしているが、ホントだろうか。
朝日は参議院選挙の予測を、おなじみの森田実氏と野上忠興氏にやらせている。森田氏が「民主党35、自民が50と、自民大逆転」。野上氏は「民主党47、自民党39」だが、どちらも民主党は過半数割れと読む。だが、鳩山・小沢がダブル辞任すれば一挙に12議席増となるとしている。
「サンデー毎日」は衆参ダブル選挙もありと読んで、緊急予測をしている。参議院は「民主党47、自民党45」と拮抗。衆議院は「民主党221、自民党181」と、こちらも民主党は惨敗し、自民党は60議席以上伸ばすと予測する。ちなみに、小党のなかで存在感を増している「みんなの党」は、参議院で9議席、衆議院では17議席獲得すると読んでいる。
野中広務「民主分裂・リベラル派政権がいい」
現代では、野中広務氏が立花隆氏と対談をしている。その中で、政権交代は必要だったとしながらも、「あのまま自民党政権が続いていたら、国がおかしくなっていたでしょう。しかし、新しい政権が、小沢さんの権力だけが突出したこれほど哀れな政権になるとは思っていませんでした」と言い、その上で、「小沢さんの身の処し方がどうなるかで、政変が起きるのかどうか。民主党が割れて、リベラル派が多数を占めて政権に着くような状況ができればベストだと、私は思うんですがね」と述べている。
参議院選前に鳩山・小沢辞任があるのか。反小沢派が動き、政変は起こるのか。剛腕小沢は最後の賭け、衆参ダブル選挙に打って出るのか。永田町三国志はこれからが本番のようだ。
最後にちょっと気になる情報を書いておきたい。「紙の爆弾」(鹿砦社)の6月号「ダイヤモンド社が怯えた『出版タブー』の真相」がそれだ。「紙の爆弾」によれば、4月6日発売の『週刊ダイヤモンド』が「電子書籍と出版界」という60ページもの特集を組んでいたのに、直前に上からストップがかかり、中止になったという。
その理由は、出版界のシステムについて触れるときは、取次会社をはじめとした流通機構の決定的な影響力について書かざるをえないが、それゆえ、取次会社の機嫌を損ねては社の存亡の危機にかかわると上層部が判断し、見送ったのではないかという見方があるというのだ。
田中久夫編集長から編集部員に宛てたメールでは、第1章の「凍える出版社」で14年連続で減収を続ける講談社の経営難を取り上げるはずだったが、講談社は、先日発足した「日本電子書籍出版社協会」(電書協)の幹事社になる可能性があり、講談社のことを書けば、電書協から村八分にされかねないリスクがあるため、経営判断したと明記されていたという。
今年は電子書籍元年といわれる。しかし、日本の出版界がこれに対応するためには、出版界の構造改革と再販制度の見直しが絶対条件である。出版不況になればなるほど新刊書の点数が増える悪循環を断ち切り、電子書籍への対応を迅速に行わなければ、日本はこの分野でも「ガラパゴス化」していくことになる。