2018年 7月 19日 (木)

金融パニック寸前!EU危機拡大に歯止めかかるか

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   ギリシャの財政危機に端を発した金融不安で、欧州連合(EU)が統合以来最大の危機に直面している。統一通貨ユーロの下落が止まらず、世界同時株安まで引き起こした。市場はいま、国家に不安を抱いている。

財政破綻のドミノ倒し

   ギリシャは昨年政権交代があった。パパンドレウ首相の新政権が調べたところ、ギリシャの財政赤字が、EU加入条件である「GDP比3%」をはるかに超えていることがわかった。これまでの政権がウソをついていたのだ。

   財政悪化にはギリシャの事情があった。人口1000万人の小国だが、4人に1人が公務員で、さまざまな手当や年金システムで手厚く守られていて、これが財政を圧迫していたのだが、前政権はこれを隠したまま国債を発行し続けた。

   国債はドイツ、フランスなどEUの金融機関が大量に引き受けている。ギリシャが破綻したら影響は計り知れない。信用不安はたちまち欧州全体におよび、今月初めのニューヨークで株価が急落した。

   これを受けて、EU16カ国首脳会議は国際通貨基金(IMF)とともに、今後の危機も含めて、85兆円を超える前例のない巨額支援策を打ち出した。にもかかわらず、ユーロの下落は止まらず、一昨年夏には1ユーロ168円だったのが、17日には112円台をつける事態になった。

   市場はギリシャの財政赤字削減策の実効性に疑問をもっているのだ。ひとつには、ギリシャに蔓延する脱税がある。今月財務省が発表した脱税の疑いのある医師のリストには年収300万円という申告もあった。高級住宅に住み、ヨットも持っているような階層である。税金を払っていない富裕層が50 万人もいるという数字もある。

   しかし、財政が逼迫している国はギリシャだけではない。景気対策に国債を発効し続けていたポルトガルやスペインも、構造的にはギリシャと似ている。第2、第3のギリシャになる不安。市場は財政再建の緊縮政策が、さらに景気の回復を遅らせると不安視する。

最大支援国ドイツ国民「ギリシャに税金使うな」

   どうしてギリシャのウソを見抜けなかったのか。田中素香・中大教授は、「ギリシャはすでに04年に一部のウソが露見していたが、EUがそれを放置したこと」「EUには各国の内情を精査する権限がなかったことをあげた。国は別々のままに、通貨統合だけを進めた矛盾が出たのだと指摘する。

   支援の中心になるドイツのメルケル首相は、事態の乗り切りに加盟国の「団結」を訴えている。EUの統一を守るための正論ではあるのだが、今月初めの州議会選挙では連立与党が敗北した。ギリシャ支援に対する厳しい審判だ。

   ドイツ国内では、「豪勢にヨットで遊ぶ連中のために、なぜわれわれの税金を?」「ポルトガル、スペインが続けば、ドイツの金庫はカラになる」「マルクに戻せ」という声も出始めている。「ギリシャのような国がいるかぎり、いずれユーロ圏は崩壊する」と悲観論を主張する経済学者もいる。

   EUにとって最大の危機といわれるゆえんだ。「ドイツがEUの命運を握っている」と田中教授はいう。ユーロはEU統合の象徴だが、これを守れるかどうかは EUを守れるかどうかでもある。カギはEUの国家機能を強めることができるかどうか。フランスは「経済政府」の設置を主張している。

   EUは人類が初めて挑んだ壮大な統合の実験である。よりどころは同質の歴史・文化だった。欧州にとって母ともいえるギリシャで、それがコケたとは、なんとも皮肉だ。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2010年5月17日放送)

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