2024年 4月 26日 (金)

ネット席巻時代に10万部増の快挙!だから読まれる「週刊現代」

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   私が知る限り、半年間で10万部伸ばした週刊誌は、『フライデー』『フォーカス』の他にはほとんどないのではないか。その快挙を、『週刊現代』が昨年下半期に成し遂げた。

   では、なぜそれほどまでに急増できたのか、今回はその「謎」に迫ってみた。

盛りだくさんの特集と圧倒的ボリューム感

   まずは、手に取ったときのズッシリ感がすごい。グラビアも記事ページも、他誌に比べるとやや厚手の紙を使い、量感を出しているようだが、この「ズッシリ=お得感」は、340円だがペラペラで、フライデーのような新潮より60円も高いことを、一瞬忘れさせてくれる。

   巻頭グラビアは、博多の夜を楽しむ店やバーをてんこ盛りで紹介。次に、5月26日から国立新美術館で開催されている「オルセー美術館」の名画紹介。第3の企画は、先週から始まったモノクログラビア&インタビュー特集。今回は俳優の中井貴一。「日本人は今、元気がないですよね。新しいチャレンジをしようという気概もない。危機意識もあまりない。日本は今、極めて危ない状態にあると思っています」という言葉が、彼から出てくるとは。いいね!

   後半のモノクロは、キャシー中島が1年前に亡くした娘との思い出が詰まった写真とインタビュー。カラーが、上田桃子をはじめとする「美しきゴルファーたち」と森高千里のセクシーショットと盛りだくさんで、グラビアのボリュームは他誌を圧倒している。

   巻頭記事は、よく飽きないと思うほど、毎回毎回、鳩山由紀夫首相への悪口雑言大特集。今週は「世にも恥ずかしい民主党政権」

   普天間基地移設問題で、沖縄県民にまっ赤なウソをついていたことを、「国民への冒涜だ」と迫り、赤松広隆農水相が、宮崎で口蹄疫に感染した疑いがあるのを知りながら外遊していた危機意識のなさを「絶望的だ」と嘆いている。ご両人とも責任を取って辞める気はさらさらないようだが、とくに鳩山さんは馬耳東風。

   「あの人はブラックホールみたいなものです。批判だろうが不満だろうが、何をぶつけても全部吸収してしまい、何も返ってこない」と民主党議員の一人が嘆いている。

   この特集の中で、平野官房長官が「徳之島移設」で交渉していた相手は、「不動産詐欺師」だったとスクープしているが、コトの本質を抉っている記事ではない。「総理、結婚詐欺師じゃないんだから…」では、これまでの発言と、政権を取ってからの発言のブレを追及しているが、目新しい内容はない。

   最後に、反民主・非自民の支持を集めている「みんなの党」が、比例で1000万満票以上獲得するといわれているが、この党は信用できるのか、参議院選挙後、小沢民主と手を結ぶのではないかという「危惧」をぶつけている。江田憲司幹事長は「連立はやりません」と言い切っているが、信用していいのだろうか。

   この大特集からは「鳩山辞めろ」という「執念」のようなものは感じられるが、全体に総花的で、新事実がほとんどないのも不満を感じる。

「アラ還世代」にしぼった実用・読み物

   ギリシャショックはこれからが本番で、日経平均7000円割れもあるから「株・投信・外貨預金」を持ってちゃいけないと警告する記事や、宮崎県の口蹄疫パニックの現場ルポ、皇太子がこのごろ怒りっぽく、酒浸りの原因は、改善しない妻の病状や娘の学校でのトラブルだとする特別読み物「皇太子も辛いよ」がある。

   このところ「大研究」と謳って、素朴な疑問に答えようと長めの特集を毎号やっているが、これもよく解釈すれば、ページが豊富にある『余裕』なのだろう。

   今週は「人事はなぜ間違えるのか」というテーマを扱っている。「査定・リストラ・問題社員監視」を担当し、社内スパイとまで陰口をたたかれる人事部だが、昔のようにエリートコースではないようだ。

   いまだに「学閥」が幅をきかせている企業もあるが、意外なのは、社内制度を利用し、海外留学してMBAを収得したいという人が増えているようだが、これは出世の本流にはなれないというのだ。

「実は海外留学する人は、同期のなかでトップではなく、二番手集団であることが多い。(中略)将来の幹部として期待されている人材を、会社は1年でも仕事からはずすことはありませんからね」(大手商社社員)

   笑えるのは、マスコミは「上司の好き嫌いで出世が決まることが多い」のだそうだ。ニッポン放送の名物ジョッキーから社長に上り詰めた亀渕昭信氏にもインタビューしているが、結局、人生と同じで「人事もいろいろ」だから、出世できるかどうかは運次第。この当然過ぎる結論では、何のためにこの特集を組んだのだろう。

   だが、現代の強味は、ターゲットをアラ還世代にしぼり、そこへ特化した特集や、毎号必ず載っている熟年のためのSEX講座だ。

   まずは、「明日は我が身 ボケが始まるとき」では、普段それほど怒らない人が、些細なことでいきなり怒り出し、すぐに元通りに戻ったりするのは、アルツハイマー型認知症の前兆なのだそうだ。だとすると、私のように年がら年中怒って怒鳴り散らしている人間は、その兆候が見つけにくいということか。

   この病、絶対的な予防策もなければ、治療もできないそうだから、心配してもしょうがないと、諦観の境地に達するしかないようだ。

ヒット企画「熟年SEX」見せ方の工夫

   さて、現代躍進の功労者になった「熟年SEX」だが、今週は「新しい絶頂、私のオーガズム体験」。女性をオーガズムに導くために、多くの男たちは間違いを犯していると、産婦人科医の宋美玄氏はいう。

「まず男性は、『女性をイカせよう』と思わないことですね。そう思うと力んでしまい、愛撫が強くなりすぎることが多いんです。(中略)大切なのは優しい刺激で、一定のリズムをキープした淡々とした愛撫なのです」

   いかに優しく、女性をオーガズムへ誘うかが、懇切丁寧に説明される。そして最後に宋氏は、「間違った考え方を捨て、正しい愛撫や挿入を心がけてください」と読者を諭すのだ。

   毎号毎号、することは同じなのに、見せ方を工夫する編集者は、さぞかしたいへんだろうと同情を禁じ得ない。また、戻ってきたアラ還読者たちが、こうしたセックス特集を読んで、もはやオシッコをするためだけの存在だった我が息子を奮い立たせ、頑張ろうと渾身の力を振り絞っている姿は、高度成長からバブル崩壊、長い不況を生き抜いてきた企業戦士たちのこれまでの人生と重なり合い、ちょっぴり哀切なものがある。

   エッセイにも、立川談志、大橋巨泉、福田和也氏らを配し、高齢者を元気にする雑誌としてリニューアルした現代が、更なる高みへいけるのか。鈴木章一編集長に注目である。

   他の週刊誌のお奨め記事をいくつか挙げておこう。名古屋市長河村たかし氏の庶民革命に焦点を当てた「名古屋から日本を元気に!!」(朝日)。これを読むと、河村氏を総理に据えた方が、なんぼか日本のためになると思えてくる。

   先週号の記事で、警視庁に事情聴取をされた大関琴光喜の野球賭博疑惑を追及した新潮の第二弾「取調室で『黙秘権』を行使した『琴光喜』」。男・宮嶋茂樹カメラマンがタイのバンコクの内戦を撮った文春のグラビアは、一見の価値あり。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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