2018年 7月 19日 (木)

NHKじゃないとやらないやれない日曜朝の「上等」

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<日曜美術館(NHK教育日曜朝)>日曜日の朝にゆっくりと芸術を味わいましょうというかなりハイブローな番組なのだが、私が見たのは1週間後の夜の再放送だ。この日は「平明・静謐・孤高」の画家といわれる長谷川りん二郎。明治37年生まれで22年ほど前に亡くなった。

35年も続く「美術館」

   「現実は精巧にできた夢である」という言葉を残しているように、長谷川は実物を目の前にしてしか描かなかったが、描かれた絵はどこか夢幻的な美しさにあふれている。描いたのは東京・荻窪にあった自宅兼アトリエ周辺や静物画ばかりなのだが、とにかく「待って待って」描いた。

   たとえば、猫を描くにしても、途中まで描いたのと同じポーズになるまで筆をとろうとしないし、思った土の色や空の色、木々の緑が出るまで、何度でも塗り重ねる。1枚の絵を完成させるまで数年がかり、10年がかりで、その間に描いていた愛猫が死んでしまったりする。だから、多くの作品が未完成のまま。画風も生き方も古臭く見えるのだが、現代という社会から見ると、温かくて新しいさまざまな要素を持って迫ってくる不思議な絵描きさんだ。

   なぜ長谷川はそこまで見続けては待たなければならなかったのか――。これが番組のテーマである。近年見つかった長谷川の日記や手記、デッサン、遺族・関係者の話からそれを浮き彫りにしていこうというのだが、この番組のいいところは中途半端に結論を急がず、見ている側にも考えさせるところだろう。たしかに、長谷川のファンにしてみれば、最も大切なところを簡単に結論づけられてしまってはたまったものではない。わたしも長谷川の絵は何度か見たことがあるが、知らない面を見せられて驚くと同時に、なんともいえない充実感を感じた1時間だった。

   この番組はなんと35年も続いているのだそうだ。現在のキャスターは東大大学院教授の姜尚中さんとNHKの中條誠子アナウンサーで、姜さんの低くつやのある声と中條アナの柔らかい語り口調が、この番組に実に合っていて心地よい。まあ、見る人は必ず見るが、番組があることさえ知らないという人も多いだろう。NHKじゃないとやらない、やれない番組である。

      見続ける  空と緑と 土の色
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