2024年 4月 26日 (金)

これが読みたくて買う週刊誌「おすすめコラム名エッセイ」

   菅内閣対小沢一郎の抗争も、選挙戦にはいって一時休止状態だし、大相撲の野球賭博問題もメディアが騒ぐほどには大衆は関心がなさそうだ。

   参議院選挙は「増税!イエスかノーか」選挙になるようだが、私の考えでは、こうしたわかりやすい争点を自ら作り出した菅首相は、自ら墓穴を掘ったとしかいいようがない。

   これについては「週刊現代」の「『ドクターKは知っている』菅総理、その経済知識、生煮えですが」が、要点整理をしてくれている。

「結局、『強い経済、強い財政、強い社会保障』は、その道筋やロジックが薄弱であり、単なる口先だけの話ということがわかるだろう。菅総理は、経済オンチであることを素直に認めて、世界標準の教科書をしっかり勉強することから始めるべきではないか」

   大相撲の賭博問題については、「週刊文春」の「新聞不信」のこの言葉に尽きている。

「(中略)こうした相撲界の体質を長年、放置してきた新聞の感覚も麻痺していなかったか、と自問する必要があろう。(中略)今、新聞がなすべきことは、相撲協会の内情にメスを入れ、歪みを正すキャンペーンを徹底することではないか」

特別な記事がなくても毎週楽しみ

   ということで、前から書きたかったのだが、今週は連載エッセイやコラムについて書いてみたい。週刊誌は素晴らしいスクープがあれば売れることは間違いないが、毎週そうした記事が誌面を飾ることは難しい。特別な記事がないとき下支えしてくれるのが連載コラムである。

   かつては、週刊誌の連載小説が部数に大きく貢献していた時代もあった。吉川英治の「新・平家物語」、柴田錬三郎の「眠狂四郎」などがその代表だ。私見だが、現代の五木寛之の「青春の門」が、そうした華やかな連載小説時代の最後ではないか。今の読者は、単行本になって読む人が多く、毎週その小説を読みたくて、週刊誌を買ってくれる読者は少なくなってしまった。

   それに比べ、1回読み切りのエッセイやコラムは、今でも売り上げに貢献している。だいぶ前になるが、文春の安部譲二、林真理子(これは続いている)、伊集院静、山本益博のエッセイは、毎号それが読みたくて買ったものだ。

   私が現代の編集長のとき、浅田次郎さんに初めてのエッセイ「勇気凛々」を書いてもらった。開始直後から、編集者や作家の人たちから、あれはおもしろいね、あれを読みたくて現代を買っているとずいぶん言われたものだった。浅田さんが「鉄道員」で直木賞を取るのはその後である。

巨泉、談志、田原、嵐山の「寸鉄」

   私が毎週楽しみに読んでいるものをあげてみよう。現代では、大橋巨泉の「今週の遺言」(これは私が編集長のときに始めた「内憂外歓」がいったん休載して、新たに始まった)。年の3分の2は海外で暮らす氏の、外から見た鋭い日本批判は傾聴に値する。今回は、イギリスもカナダも離婚率が下がっているのに、60歳以上の離婚は激増していることから筆を起こし、世界中をアッといわせたアル・ゴア元米国副大統領夫妻の離婚について、彼の浮気からではなく、なに不自由ない老後が離婚の原因だと見ている。世界初の環境億万長者になり、毎日忙しい日々を送るゴアと、平穏に暮らしたい夫人との「生きたい道が分かれてしまった」のだ。

   立川談志の「いや、はや、ドーモ」は、師匠独特の落語を語るときと同じリズムある文章と、枕でよくやる毒舌が心地よい。今週は、菅新総理についてこう書いている。

「くれぐれも菅さんよ、何かするんぢゃないよ。何かする人に思えないから総理になった。このまま数ヶ月総理になってりゃそれでいい。歴代の総理に名は残る。東京は武蔵野あたりの市民運動家から出発して別段何かと戦った事もなかったろうし、その揚句が今日の姿。楽しく毎月外国の来賓達と食事でもしてりゃいい」

   「週刊ポスト」は、隔週連載の曽野綾子「昼寝するお化け」は毎回、「そうだそうだ」と頷きながら読んでいる。小粒だが、毎日新聞記者おぐにあやこさんが、アメリカの身近な情報を伝えてくれる「ニッポンあ・ちゃ・ちゃ」もおもしろい。

   「週刊朝日」では、政治への厳しい切り口で見逃せない田原総一朗の「ギロン堂」、食べ物エッセイではピカイチの東海林さだおの「あれも食いたいこれも食いたい」、大相撲への愛情がいわせる痛烈な批判が見逃せない内舘牧子の「暖簾にひじ鉄」、昔、「週刊新潮」で山口瞳が連載していた伝説のエッセイ「男性自身」を彷彿とさせる嵐山光三郎の「コンセント抜いたか」が最近ますますいい。今週は、松下整形塾ならぬ松下政経塾について、「平成に入ってからの政経塾は、本来の理念から変質して、政治家民間官僚養成所色を強めている。表情のないツンツルテン議員たちの賞味期限はいつまでもつのであろうか」と鋭い。

   「おたく」の名付け親で、アイドル情報に詳しい中森明夫の「アタシジャーナル」も見逃せない。梨元勝の「ここまで書いて恐縮です」は、筆者が肺ガンだと告白したが、大丈夫だろうか。芸能界の田原総一朗さんのような人だから、早く回復してもらいたいものだ。

食べ物、映画、本、ゴルフ……

   「サンデー毎日」は、記事の作りはイマイチだが、コラムは充実している。ベテラン政治評論家・岩見隆夫の「サンデー時評」、私と同じ競馬が大好きな元毎日新聞の敏腕記者・牧太郎の「青い空 白い雲」、書評や映画評なら、絶対、この人の考えを聞かなければいけない、中野翠の「満月雑記帳」もあるから、これだけで毎日を買っても損はないよ。

   「週刊文春」は、連載コラムの宝庫だったのだが、最近やや低調気味(失礼!)のようだ。その中では、小林信彦の「本音を申せば」が気を吐いている。今週の「冷し中華進化論」では、こういう下りがある。大新聞やテレビが未だに、民主党内の菅対小沢の対立を騒ぎ立てていることに「このしつこさは只事ではない」とし、「大衆は(ぼくも)そんなことに興味はない。自分の日常が問題である。一方、大新聞は大半が大本営発表風の、どこからかくる指令をくりかえすだけである」と本質をいい当てる。私には必読のエッセイである。

   連載では、「今週のBEST10」(今週はおすすめのスパークリングワイン)、取り上げる店がひとひねりしてある「斬り捨て御免!食味探検隊」で、気になった店をチェックしている。今週は、魚のうまい「新橋・濱壹と江東区牡丹・ふく田」

   老舗の新潮では、右の言論の「正論」を知りたいときは櫻井よしこの「日本ルネッサンス」に目を通す。福田和也は以前の「闘うコラム」のほうがよかったと思うが、いまの「世間の値打ち」も、彼が薦める本はもちろんのこと、音楽、特に映画がすばらしい。彼が絶賛していた「ぐるりのこと」「息もできない」を見たが、ともに素晴らしいできだった。

   ゴルフ好きに必読なのは、青木功の「おれのゴルフ」。自分ではできないとわかっているのに、毎号、切り取ってはゴルフズボンに入れておいて、試みては失敗しているのだが。

   始まったばかりだが、「週刊大衆」のム所帰りのアウトロー作家・影野臣直の「ニッポンの刑務所まるわかりガイド」は注目。7月5日号は「刑務所グルメ 後編」だったが、思わず「ウマそー」と唾を呑んだ。特別の日にでるらしいポテトチップスを残しておいて、細かく砕き、それにソースをかけて食パンにのせてサンドイッチにすると、絶品のカツサンドになるという。醤油を多めに入れた納豆、キムチ、ホタテ缶、福神漬けをご飯の上にのせる「納豆スペシャルキムチ丼」は早速つくってみたが、うまい! 「アサヒ芸能」の「高須基仁のオンナ浚渫船(サルベージ)」は今、最も過激なコラムだろう。

   ちびちびハイボールをなめながら、いいコラムを読むのは至福の時間ですぞ!

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中