【感涙戦評】「忍者」のごとく相手を幻惑。抜け目ない攻めで快勝 関東一
8/8 第4試合▽1回戦▽関東一 9-2 佐野日大
関|000 020 034|9
佐|000 000 002|2
9点という思いがけない大量点を奪って圧勝した関東一。しかし、内容を見れば、打ち崩したというより、相手のミスに乗じて勝機をつかんだ印象が強く、抜け目のない都会チームらしい快勝といえた。東京の下町の学校らしい、江戸っ子の気風のよさがうかがえた一戦だった。
その戦いぶりを象徴していたのが2番を打つ小兵の渋沢だった。持ち前の俊足を生かし、スピードの脅威を存分に見せつけた。5回表、2死から暴投で1点を先制した後、渋沢は普通なら2塁ゴロを内野安打として追加点を挙げた。渋沢は8回にも先頭打者として四球を選んで出塁。犠打で二塁に進むと、本間の中前打で悠々と生還した。9回にはまたもや内野安打でチャンスを広げ、伊藤、宮下の連続本塁打につなげた。
注目の左腕対決は白井の完勝
渋沢は出塁すると、次の塁を狙う姿勢を鮮明にし、これが佐野日大のエース関にどれほどのプレッシャーをかけたことか。まさに「忍者」のごとく相手を幻惑した。関東一は渋沢に代表されるように走塁が見事だった。日頃「試合形式の練習に重点を置いた」とのことで、その効果が出たといえよう。
投げる白井もテンポがよく、小気味のいいピッチングだった。途中、15人連続アウトに仕留め、クリーンアップトリオに対しては計4三振を取り、外野に1本も打たせなかった。変化球に緩急をつけ、追い込めば打者の懐深くに速球を投げ込んで勝負する度胸の良さは見る者をうならせた。注目の左腕対決は白井の完勝に終わった。
佐野日大にとっても信じがたい大敗だったろう。2回2死1、3塁のチャンスを生かしておけば展開は大きく変わったはずである。関が4、5回の2イニングで50球を超える投球数を投げ、完全にペースを崩された。
菅谷 齊
菅谷 齊(すがや・ひとし)プロフィール
1943年、東京生まれ。法政大学卒。法政二高硬式野球部時代に甲子園で夏春連覇(1960,61年)を経験。共同通信社ではプロ、アマ野球、大リーグを主に担当。84年のロサンゼルス五輪特派員。プロ野球記者クラブ、野球殿堂入り選考の代表幹事を務める。野球技術書など著書多数。現在、日本記者クラブ会員(会報委員会委員)。