2024年 4月 26日 (金)

「梨園アホボンと元暴走族」の情報バトル―裏では示談交渉と「週刊朝日」

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   私事で申し訳ないが、今朝(2010年12月9日)友人から電話が入った。「週刊現代」時代から長い付き合いのあった事件ライターの朝倉喬司さんが亡くなったというのだ。

   朝倉さんは10月に長く住んだ逗子を離れ、厚木からバスで少し入った愛甲郡に移ったばかりだった。奥さんとは離婚し、子供たちとも離れて暮らしているから、一人暮らしである。友人が家を訪ねて行って見つけたというから、死因はまだ詳しくわからないが「孤独死」であった。3週間ぐらい前に飲んだとき、これからゆっくり書きたいものを書いていけると張り切っていたのに、残念だ。

逮捕状の「R」サイドにすり寄るテレビ

   ところで、平和ボケしたニッポンの最大の話題は「海老蔵問題」である。事件当初は、梨園のアホボンが西麻布バルビゾン27ビルのバーをはしごして酔っぱらい、11階のカラオケバーで元暴走族の兄貴分にからみ、それに怒った若い衆の一人にボコボコにされてしまった。命からがら逃げ帰った海老蔵の哀れな姿に驚いた新妻が、警察に通報し、本人は病院へ入ってしまったというものだった。

   しかし、日が経つにつれて、被害者である海老蔵の「悪行」が次々に暴露され、この件も、海老蔵が無理矢理酒を飲ませた、最初に手を出したのは海老蔵で、殴られた兄貴分も相当な怪我を負ったという診断書までが出てきて、ワイドショー、スポーツ紙、週刊誌は、挙って海老蔵バッシングに走っているようだ。この背景には、日頃の言動が大言壮語で生意気だったことで、メディアから「あのやろー」と思われていたことがあるようだが、それにしても不思議な情報戦になっている。

   「週刊新潮」によれば、逮捕状が出た29日を境に『潮目』が変わったという。海老蔵と酒を飲んでトラブルになったのは、暴走族の連合体「関東連合」のOBだが、29日以降、逮捕状が出た男の関係者やビルの飲食店関係者たちが、率先して取材に応じるようになったのだという。「これにより、殴られた海老蔵が『一方的な被害者』であったとの世間の見方は完全に覆されました」(捜査関係者・新潮)

   マスコミ各社は、情報を得ようと「関東連合」サイドにすり寄り、裏付けのない情報を垂れ流しているところも多いと、「週刊文春」は加熱する取材合戦の内幕を暴露している。

「彼ら(関東連合=筆者注)の紹介で、これまで正面取材に応じなかった店の従業員や、R(逮捕状が出ている元暴走族=筆者注)に近い暴走族関係者と接触できたことは事実です。OBらは、マスコミが海老蔵の被害状況ばかりを伝え、Rがますます不利な状況に置かれることに危機感を覚えていた。他にもテレビ朝日やTBSなど、彼らに協力を要請したマスコミは少なくない」(日テレ関係者・文春)

   R側は自分たちに好意的に書いてくれるマスコミを選別している。NHKは公共放送ということがあるのだろう、距離を置いている。フジはRの自宅を張り込んだり、母親を直撃したりしたことで反感を買い、協力を断られたそうだ。文春も先週号の書き方がお気に召さなかったようで、弾かれている。

   フジは協力を得られなかったことで発奮したのか、海老蔵が入院中、屋上で妻と一緒にくつろいでいるところをスクープ撮している。

海老蔵釈明会見「一世一代の大芝居」

   こうした相手の反撃に警戒感を抱いたのか、海老蔵は12月7日、午後8時から緊急記者会見を開き、自分が「被害者」であることを釈明したが、これがすこぶる評判が悪いのだ。

   新潮は「一世一代の大芝居」と小見出しをうち、こう書いた。

<「酩酊状態だった。記憶が曖昧なところもある」「お互い酔っていた。介抱していたようには見えなかったかもしれないが、介抱していた。非常階段はおりたような気がする」などと、酔っていたことを理由に曖昧な答えに終始したのである。(中略)「(暴行事件のきっかけをつくったのは)自分ではない。(自分自身は)暴力はふるっていない」(中略)といった言葉を連ね、自分はあくまで『完全な被害者』と強く主張したのである>

   会見に出てきた海老蔵は、左目の充血に当夜の面影を残してはいたが、外形的には腫れも引いており、緊張はしていたのだろうが、いい子を演じきったが、テレビを見た人間の多くは、何だ騒がれているほどたいした怪我ではなかったなと、しらけた感じを持ったのではないか。

   新潮は追われているRを匿っていたとされるAVプロダクションのオーナーを直撃している。彼は「あいつは間違いなく、9日の木曜日に出頭する」と話し、暴走族の元リーダーも、同日、警察に被害届を提出するというのだ。

   そうなれば、世にも不思議な歌舞伎役者と元暴走族との情報バトルは第2ラウンドに入るが、海老蔵が隠しておきたい事が白日の下に晒されることになるかもしれない。

   「週刊朝日」は、元暴走族側は海老蔵攻撃を続ける一方で、弁護士を立てて示談交渉していると報じている。暴力団の大組織の名前まで出して、海老蔵側からハンパではないカネを取ろうとしているというのだ。

「示談が成立すれば、得たカネの一部は組に上納されるだろうから、これも看過できない。犯人隠匿に加え、恐喝容疑で、C(新宿を根城にしている広域暴力団傘下の構成員=筆者注)だけでなく組への捜査も視野に入れている」(四課関係者・朝日)

   民暴に強い弁護士を味方に付けた海老蔵だが、無期限謹慎が解け、晴れて舞台に上がれる日まで、まだまだ茨の日々が続くようだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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