市場規模400兆円「途上国貧困層ビジネス」夢と壁

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   途上国の「貧困層ビジネス」がネクストマーケットとして注目されている。グローバル経済で新興国の躍進ぶりが脚光を浴びるなかで、市場として無視され続けてきた途上国貧困層。1人当たりの年間所得が3000ドル(約24万円)以下の人口は約40億人、世界の7割を占める。一方で、次世代マーケットとみられている途上国貧困層の市場規模は400兆円とも見積もられる。

   バングラデシュのグラミン銀行は無担保少額融資で貧困層を支援し、4年前にノーベル平和賞を受賞したことで知られる。このグラミン銀行が外国企業と合弁会社を設立し、貧困層の雇用促進や消費を喚起するビジネスをスタートさせ、日本の食品メーカーも今年10月に合弁企業設立に踏み切った。「クローズアップ現代」は『グラミン流貧困ビジネス』が新たなビジネスモデルになり得るのかを探った。

バングラデシュ「グラミン銀行」と合弁設立

   グラミン流貧困ビジネスの仕組みはこうだ。外国企業はグラミン銀行と合弁でバングラデシュに会社を設立。グラミン銀行が提供するのは必要な人材と原料。全土に800万人いる銀行利用者のネットワークのなかから調達する。外国企業が提供するのは雇用の機会と高い技術力だけなので、初期投資に大きな資金をかけずに済む。

   これまで合弁会社は9社設立されたが、その中に新潟県南魚沼市の「雪国まいたけ」がある。

   主力商品の一つである「もやし」は、2009年度15億円を売り上げたが、中国から調達してきた「もやし」の種となる緑豆の仕入れ価格がここ3年で3倍以上にハネ上がり、利益が落ち込んでいる。そこでグラミン銀行のネットワークを使い、バングラデシュで緑豆栽培をすることにしたのだ。

   合弁会社設立の責任者である佐竹右行常務によると、実際に栽培をしているのはグラミン銀行から紹介された農家50人。新たな雇用機会を生み、緑豆を買い上げることで、貧困層に現金収入をもたらす。佐竹常務は「それでも中国より安い緑豆を調達できる」と考えている。

   ただ、すべてが合弁契約までたどりつくわけではない。大阪の化学メーカー「日本ポリグル」は、3年前から南部の農村地域で1袋(120円)で1トンの汚水を浄化できる水質浄化凝集沈降剤の販売を始めた。販路を全土に拡大したいと考えていた矢先、グラミン銀行から合弁会社設立の話が持ち込まれた。ところが、合弁企業契約にあたってグラミン銀行側から次のような厳しい条件を突き付けられた。

「得た利益は日本に持ち帰れない。バングラデシュの貧困層のために再投資する」

   同社の小田兼利会長は「経営にもだえ苦しんでいる日本の中小企業は、儲けがないと誰も出ていきませんよ。ボランティアでは生きていけない」と合弁事業を諦めた。

利益の国外持ち出しは禁止

   グラミン銀行のアハマド・ユヌス総裁はこう語る。

「ひとたび外国企業が参入すると、国の経済を支配しお金を奪い去っていく。新たな経済帝国主義といえるものです。それを防ぐために、私たちのビジネスでは利益追求を認めません。代わりに社会問題の解決を追い求めるのです」

   キャスターの国谷裕子が「利益を外に持ち出さないという原則、信念は相当固いものなのでしょうか」と、貧困ビジネスに詳しい北海学園大学の菅原秀幸教授に聞く。

「これまで途上国は収奪されてきた。もはやそれは許さないというのがユヌス総裁の強い信念。どうやって相容れる状態に融合するかです」

   菅原教授によると、日本の中小企業はバングラデシュが必要とする技術をたくさん持っており、「日本人が本気でやりだしたら必ず世界のキープレヤーになる」と太鼓判を押す。

   ユヌス総裁も「日本企業の技術をバングラデシュで役立てて欲しい」と望んでいるのだが、皮肉にも最大の壁が彼の固い信念。その信念を少し柔らかくすることで相容れる融合策が生まれるのかもしれない

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2010年12月15日放送「『貧困層ビジネス』グラミン戦略の光と影」)

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