卑屈なまでに米国奉仕―菅直人は「一人じゃパンツもはけない奴」

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   アメリカで「ならず者ジャーナリスト」と称されたハンター・S・トンプソンは、ニクソンを毛嫌いし「一人じゃパンツもはけない奴」と罵ったと、「週刊新潮」の「TEMPOスクリーン」で北川れい子氏が書いている。

   鳩山由紀夫前首相の「沖縄海兵隊の抑止力は方便」、菅直人首相の「日本国債格下げには疎い」発言など、あきれ果てるしかない民主党のトップたちに、ハンターの言葉をそのまま投げつけてやろうではないか。

   小沢一郎氏の党員資格停止処分を決めたはいいが、早くも小沢派の議員16人が会派離党届を出し、まさに内憂外患、菅政権は難破間近のようだ。「週刊朝日」で、菅首相と30年来の同志だという中川右介氏が「(菅さんは=筆者注)思考は原理原則主義だけど、行動は妥協主義」だと評しているが、要はいい加減な人間だということではないか。

   小沢氏との確執は党内問題だから勝手にやればいいが、菅氏がこの国の農業に壊滅的な打撃を与えかねない重要政策に前向きなことへの、深刻な危機感が広がっている。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)がそれである。

   「サンデー毎日」は東大名誉教授の宇沢弘文氏に「卑屈なまでに米国に奉仕する菅政権」と、TPP批判をさせている。宇沢氏は「貿易自由化の理念は、参加各国が同じ土俵に上がって、同じルールに従って市場競争をするものです」と前置きし、ベトナムと、ベトナムの自然と社会と人間を破壊・殺戮したアメリカを例に上げる。

   いまだに20%近い森林がダイオキシンで汚染されているベトナムと、大量の二酸化炭素を排出し、地球温暖化の原因をつくり出しているアメリカが、「農産物の取引で同じルールの競争をすることを良しとする考え方ほど、社会正義に反するものはありません」と断じる。

   菅首相が唱える「平成の開国」は「安政の開国」を念頭に置いているようだが、この不平等条約で日本の農村が致命的なダメージを受け、その被害者意識が軍国主義の台頭を許すことになったとする。TPPを締結すれば、これまで大多数の国民が、経済的社会的に安定した国を造るために努力してきた志を打ち砕き、小国が多い東アジアの不安定化が進む恐れもあると、菅首相への憤りを隠さない。短いコラムだが必読である。

けだし見もの…「週刊現代」と相撲協会の場外乱闘

   大相撲の八百長問題は、案の定、にっちもさっちもいかないようだ。反対に、がぜん元気なのは「週刊現代」だ。今号(2011年2月26日号)で「相撲協会理事長と八百長力士を警視庁に『詐欺』で告訴する」と大特集を組み、発売と同時に相撲協会に通告書を送った。7日以内に誠意ある回答がなければ、刑事告訴も辞さないという。こちらの場外乱闘も見ものである。

   読み物としては「週刊文春」の「八百長なし『ガチンコ場所』が一度だけあった。その仰天の結末!」がおもしろい。当時一人横綱だった北の富士と暴力団の交際や、名古屋場所の琴櫻と大麒麟の一番が八百長だと批判された72年初場所、協会側は「相撲競技監察委員会」を設置し、ガチンコ相撲をやらせるため、場所前半から上位陣を取り組ませる編成にしたのだ。

   その結果何が起きたのか。横綱・北の富士は7勝7敗で休場。張出大関・前の山も五日目から休場。優勝したのは前頭五枚目の栃東で、11勝4敗だった。

   これが何を意味するのか明らかだろう。だがこの試みは、この1回だけで終わってしまう。最初のうちは満員御礼だったが、終盤になるとつまらない取り組みを組まざるを得なくなり、観客も減ってしまったからだそうだ。

   かつて「土俵の鬼」といわれた初代・若乃花が親しい記者にこう話したという。

「十五日間、ずっと張り詰めて勝負するって、意外と簡単なことじゃないんだよ」

   55年(昭和30年)前後から、テレビ中継の開始にともなって年6場所制が実施されたそうだが、これを機会に、年4場所程度に減らすことも考えたほうがいいと思うが。

「尖閣ビデオ」既存メディアがパスされた深刻な不信

   今週は軟派記事に見るべきものはない。もう1本の注目記事は、「週刊朝日」の「sengoku38の告白 いま明かされる尖閣ビデオ流失の真相」。元海上保安官・一色正春氏がインタビューに答えているが、メディアの末端にいる人間として気になる箇所がいくつかある。それは既存メディアが、こうした内部告発の受け皿ではなくなってしまったという、当然ながら、厳しい現実である。アメリカのCNNにはビデオを送ったが、日本のメディアには送らなかったことを聞かれ、こう答えている。

「不信感というよりは可能性です。日本のメディアでは、おそらく公開できなかったでしょう。わずかとはいえ海外メディアのほうが公開される可能性が高いだろうと思いました」

   また、Youtubeでビデオが流れ、あっという間に情報が拡散していく速さに驚き、犯人捜しが始まったマスコミへの不信感をこう語る。

「捜査当局の発表報道というより、意図的にリークされたものをマスコミは裏もとらずにそのまま書く。発表に突っこみを入れたり、反対の意見を書いたりすれば、もうエサをあげませんよとばかりに、情報を遮断する。どこかの国の情報統制のやり方と同じようなものだなと思いました」

   チュニジア、エジプトで広がった市民デモは、バーレーンやリビアでも大きな反政府運動になりつつある。これはツィツター革命、SNS革命ともいわれる。ウィキリークスが次々に外交機密文書を公開し、既存メディアはその後追いをするだけである。

   既存メディアはこのまま立ち枯れてしまうのか。先日会った『報道特集』の金平茂紀キャスターは、既存メディアにいる人間たちのジャーナリストの資質の劣化を嘆いていたが、彼はまた、「ツィツターやSNSはツールです。ツールを使って、われわれジャーナリズムにいる人間が、何を伝えなければいけないか、真剣に考え、ロールモデル(お手本)をつくればだいじょうぶだ」といっていた。

   週刊誌はどのようなロールモデルをつくるのか、これから見せてほしいものだ。

元木昌彦プロフィール
1945年11月24日生まれ/1990年11月「FRIDAY」編集長/1992年11月から97年まで「週刊現代」編集長/1999年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長/2007年2月から2008年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(現オーマイライフ)で、編集長、代表取締役社長を務める
現在(2008年10月)、「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催。編集プロデュース。

【著書】
編著「編集者の学校」(講談社)/「週刊誌編集長」(展望社)/「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社)/「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス)/「競馬必勝放浪記」(祥伝社新書)ほか

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