中東民衆デモ「新政権アメリカ離れ」で日本深刻

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   政権退陣を求める民衆のデモが中東全域に広がっているが、窮地に立たされているリビアのカダフィ政権崩壊も時間の問題と見られる。徹底した言論弾圧で独裁を続けてきたカダフィが排除されれば、他の独裁国の民衆も右へ習え、勢いづくのは必至だろう。

   中東で起きている事態に危機感を募らせているのは、戦略上この地域を重視してきたアメリカだが、変革の勢いにまだ付いていけないようだ。今後、成り行きによっては、中東の枠組みが大きく変わる可能性がある。「クローズアップゲンダイ」はその行方を探った。

追い込まれる親米政権

   チュニジアに端を発した民衆の抗議デモ、エジプトを経てリビア、バーレーンと飛び火し、今や15の国で民衆の抗議デモが大なり小なり起こっている。 なかでも、独裁政権と民衆の死闘が続くリビア。カダフィ大佐は23日(2011年2月)、国営テレビで「辞任をする気はない」と次のような強気の演説を行った。

「私は死ぬまで戦う。私は数百万人の同志でリビアの隅々まで粛清する。1軒の家も、1本の路地も、1人残らず粛清する。反逆者たちを決して許さない」

   5年前までリビア駐在大使を務めていた塩尻宏・中東調査会常任理事こう分析する。

「カダフィには何度か会っているが、今回はやや興奮気味に話しているのが印象的だった。この大きな流れは誰にも止められない状況になっている。あとは、『最後まで戦う』というカダフィに、どれだけの人が付いていくかにかかっている」

   やはり民衆デモが起きているバーレーンは、国民の30%足らずのスンニ派が政権中枢を握り、70%を占めるシーア派住民を支配してきた。このシーア派住民がスンニ派政権に差別撤廃を求めて動き出したのだが、バーレーンの宗派対立は、リビアとは異なる深刻な事態も予測されている。

   1つは北隣に接するシーア派大国・イランとの結束を求める若者の声が高まっていること。バーレーンには基地を提供されてアメリカ第5艦隊が駐在、イランに目を光らせてきた。さらに、バーレーンの南隣りは世界最大の原油埋蔵量を誇るサウジアラビアがある。サウジアラビアもバーレーン同様、スンニ派が実権を握っている。シーア派は人口の10~15%といわれるが、多くは油田地帯に住んでいる。

   この地域に詳しい日本エネルギ―経済研究所の田中浩一郎理事はこう解説する。

「(中東で)親米政権といわれたところがいくつか倒れています。地域全体でみれば相対的にイランが突出する。だからといっバーレーンの運動がイランと合致し、政教一致の体制を求めるとは思えません。
   現在、デモに参加している若者たちはバーレーン国旗を出していて、シーア派色とか、イランと連動するような動きを控えています。17日未明の民衆デモに対する強制的な排除で、『王政打倒』に抗議行動の性質が変わってきています」

石油の9割依存

   こうした事態をアメリカはどう見ているのか。米安全保障会議のフリント・レバレット元中東部長に国谷裕子キャスターが聞いた。

――イラン軍の船が30年ぶりにスエズ運河を通りました。アメリカの影響力低下によるものと見ていますか。

「アメリカの影響力は後退し、同盟国を失いつつある一方で、イランやイランに支援される国や組織の影響力が大きくなってきています。
   アメリカが行ってきた中東政策に中東の住民の多くは嫌悪感を持っています。これはまぎれもない事実。アメリカと同盟関係を結んできた国々の政権は、国民の支持を集めていない政権ばかり。
   今後、中東で民主化が進み、エジプトやバーレーン、その他の国々で国民の声を反映するような新たな政府が生まれた場合、その政府はアメリカとの戦略的協力を積極的に進めなくなると思います。
   アメリカ政府がこれまでの中東政策にこだわり、政策の見直しを行わないようなら、アメリカは中東地域から締め出されるという悪夢のシナリオが現実味を帯びてくるでしょう」

   アメリカの中東政策に追随し、石油消費量の9割を中東原油に依存している日本はどうすればいいのか。深刻なのは日本かもしれない。

モンブラン

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