2024年 4月 26日 (金)

東北のモノ作り再生できるか?早くも始まった「日本回避」

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   東日本大震災から3週間余り、被災地はいまだ瓦礫の山また山の無残な姿を晒したままだ。被災者たちからは復興の掛け声が上がり始めているが、その一方で日本経済の一翼を担ってきたモノづくり産業への打撃の大きさが浮き彫りになっている。

   中部地方や九州に次ぐ自動車やハイテク産業の一大拠点が一瞬にして破壊されてしまったわけだが、打撃は東北地域だけにとどまらず、日本の国際競争力に暗い影を落とすからと心配するが高まっている。

   「クローズアップ現代」は東北地方の企業が受けた打撃の大きさと危機に直面する日本経済再生の道を探った。

阪神淡路と大きく違う深刻度

   太平洋岸沿いに点在する東北の産業は、大集積地のような目立つ存在ではなかったが、技術力は評価が高かった。経済評論家の内橋克人はその理由をこう語る。

「東北のモノづくり、ハイテク産業にはいくつかの特徴があります。1つは産業地帯が固まっているのではなく、農村を含めて地域社会全体に広く散らばっていること。生活と生産が同じ場所にあった。特徴あるハイテク部品を作るという専門家が、地域全体で協働しているのが大きな強みだった。
   2つ目は地域の中で生産が完結するのではなく、東北地方で作られたモノは日本のハイテク産業、自動車産業の一環としてあった。東北がこういう形(被災壊滅)になると、日本の自動車産業、ハイテク産業が大きな困難に襲われてしまう。ここが阪神淡路大震災との大きな違いです。
   3つ目はハイテク産業にかかわってきた東北人の技能の高さ。東北独特の律義さとか、責任感、忍耐力の強さが根こそぎダメージを受けた。大変残念」

「転注が一番こわい」

   技術の高さを物語る例として番組が取り上げたのが、宮城県石巻市の「堀尾製作所」とその下請けの「雄勝無線」。堀尾製作所の主力製品はカーオーディオの部品などだが、精度の高さから世界中の自動車の10%で使われている部品もある。

   工場は高台にあって津波の被害は免れたものの、激しい揺れで機械が傾くなど手痛いダメージを受けた。

「滞っている部品で迷惑をかけている。早く再開したい」(堀尾雅彦社長)

   3月20日(2011年)には電気も復旧し、工場の試運転までにこぎつけた。ところが気がかりがあった。下請けの雄勝無線が津波の被害にあい、従業員14人は無事だったが、機械や道具のすべてを失ったのだ。

   雄勝無線は堀尾製作所の製品の仕上げや検査を行い、確かな仕事ぶりには定評があった。その技術を失えば堀尾製作所の商品の信頼も失いかねない。堀尾社長は「他社に転注されることがわれわれにとって大打撃」と、雄勝無線に発注している工程を自分のところで行えないか試したが、スピードが不十分のうえ技術も難しく断念した。結局、雄勝無線に自社工場の一角を貸与して機械や道具も揃え、一緒にやることにした。

   雄勝無線の山下健吾社長はホッとした表情でこう語る。

「これでおしまいと思っていたが、堀尾さんのおかげでようやくこぎつけることができた。これからが大変ですが、もうやるしかない」

復興したときに「仕事がない!」

   キャスターの国谷裕子が「部品1つ足りないと生産できないというのが数多くあって、日本国内だけでなく、海外でもそれに依存するものが多かった。今回の大災害で日本経済の位置づけはどうなっていくのでしょうか」聞く。

   内橋は次のように答えた。

「グローバル化というのは世界最適調達なんです。最も優れた製品を最も安いコストで調達できるということが東北で進みつつあった。東北できなければ、他の地域に振り替えて調達することを、多国籍型の巨大企業は当然考えているでしょう。現地の企業はこれが最も怖い」

   瓦礫の山の東北。今のままでは取り残されてしまう。そうならないためにはどうすればいいのか。

   「言ってはならないかもしれないが…」と前置きして、内橋はこんな提言をした。

「すでに日本回避、アボイド(避ける)して、生産構造のパラダイムを作り直そうという動きが海外で出ている。東北は復興に向け懸命に努力しているが、復興なった時に従来のままだと自分たちの存在が無視されてしまう。国を挙げて新たな生産の在り方を求めることだと思う」

   復興はようやく緒に就いてばかり。これからが本当の意味での試練が待っているようだ。

NHKクローズアップ現代(2011年3月30日放送「連鎖する震災ダメージ どうする日本経済」)

モンブラン

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