あの声に助けられた!最後まで避難呼びかけ行方不明…役場職員・遠藤未希さん24歳

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   宮城県南三陸町。人口1万8000余人のうち、約400人の死亡が確認され、数千人が行方不明となっている。いまでも生き残った町の人たちの耳の奥に残っている声がある。

「大津波が予想されますので、急いで高台へ避難してください」

   防災無線の呼びかけだ。声の主は役場職員の遠藤未希さん(24)。そのアナウンスで多くの町民が避難して助かった。しかし、彼女は津波にのまれ、いまだに行方がわからない。大震災復興支援の「前を向いて歩こう」のコーナーで取り上げた。

宮城県南三陸町危機管理課

   母親の美恵子さん(53)は娘のことを思うと涙が止まらない。専門学校へ行って介護士の資格をとったが、地元に残ってほしいという親の思いもあり役場に勤めた。今年(2011年)で5年目。去年4月から危機管理課に配属され、防災無線の担当だった。3月11日の震災発生の日、未希さんは防災対策庁舎の2階から防災無線の呼びかけを繰り返した。いまも残るその声は、冷静で落ち着いていた。大混乱の中で人々が慌てないように、一語一語はっきり分かるように呼び掛ける。

   大津波はその庁舎も襲った。3階建ての庁舎はすべて押し流され、鉄骨だけが残った。テレビで何度も映し出された、あの庁舎だ。

「防災無線がなかったら、逃げていなかった」
「あの声ははっきり覚えている。あれがなかったら、もっとたくさんの人が亡くなっていた」
「自分の命と引きかえに町民を助けた。天使の声だと思っています」

   町のたちはみんなそう思っている。役場の同僚は「誰だって逃げ出したいのに、彼女は責任感が強かった」「まだ見つからないのが悔しい」と話す。

母親「それは私の娘です」

   母親美恵子さんは避難所で、隣の地区の女性が「あの声が忘れられない。あの声に助けられた」と話しているのを聞いた。思わず言った。

「それは私の娘です」

   笑顔でピースサインをしている写真が残った。昨年7月に結婚、今年9月に披露宴の予定だった。「3月にはドレスの試着に一緒に行こうね」といわれていた。

   名前の「未希」は未来の希望という意味だ。南三陸町の復興へ向けての合言葉となった。

文   一ツ石
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