カキもサンマも食卓から遠のく!?東北だけじゃない漁業被害

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   三陸沖は世界有数の漁場だ。青森、岩手、宮城、福島4県の水揚げ高は日本の2割を占める。その漁業が東日本大震災による津波で大打撃を受けた。315の漁港が壊滅状態になり、1万9000隻の漁船が失われた。

   全国2位を誇った宮城のカキはほぼ全滅した。被害額220億円以上。気仙沼湾を埋め尽くしていた養殖イカダは、いまひとつも見当たらない。800を超す事業者が被災した。その1人、畠山昌夫さん(74)は廃業を決意した。

「何もないでしょう。船はあそこでひっくり返っている」

   家も失い、妻と2人避難所暮らしだ。後継者もなく、再建の資金もない。祖父から数えて 70年。「情けなくて涙が出ますよ」

   実は宮城のカキは宮城だけのものではなかった。北海道など各地へ出している「種ガキ」がある。2割ほどが生き残ったが、とても足らない。状況を見に来た北海道の養殖業者は、「秋以降、(北海道産のカキも)出荷量が落ちるかもしれない」という。

北海道、日本海の漁船も気仙沼で被災

   こうした影響はカキだけではない。気仙沼で被災した100トン以上の大型船37隻のうち30隻は県外の船だった。気仙沼は水揚げだけでなく、造船所、鉄工所、電気関係から塗装までが揃った有数の整備基地でもあった。陸に打ち上げられた船の船籍も、青森、富山、根室とさまざまだ。

   船体は保ったものの全焼したサンマ漁船「進洋丸」は根室の船だ。船主の木根繁さん(74)ははじめ修理するつもりだったが、あきらめた。あまりにダメージが大き過ぎたのだ。新造には8億円かかる。北海道と東北で全国の8割を占めるサンマ漁で両地域は密接な関係にある。「進洋丸」の乗組員16人のうち9人は東北人だ。8月に根室沖で始まる漁の水揚げは北海道の港へ、サンマが南へ下る9~10月の漁の水揚げは東北になる。最後に気仙沼へ入った船は、そのまま翌年に備えて整備に入るのだ。

   船の機器や漁具でも影響は全国に及ぶ。兵庫の魚群探知機のメーカーは東北に3か所の事務所をもち、年間10億円を売り上げていたがすべて被災した。岡山の漁網メーカーの倉庫には、行き場のない漁網が山になっていた。メーカーは「注文主が震災で行方不明なんです」という。漁網は魚種や漁場によって編み目も材質も違う。完全なオーダーメイドだ。だから他に売ることはできない。損失は数千万円になるそうだ。社長は言う。

「漁業は裾野も奥行きも深いから、ひとつだけが復興というわけにはいかない。全体が復興してほしい」

全国有数の整備基地漁港

   末永芳美・東京海洋大教授は「三陸は漁場がいいだけでなく、基地機能も高く、後背地の加工業、冷凍倉庫、配送・流通も発達していた。だから全国の船が集まってきた」という。これらが機能しなくなると、日本の食卓にもろに響くのは当然だ。

   加えて、この震災では福島原発の放射能という難題がふりかかった。北茨城から銚子にかけての風評被害は深刻だ。これは東京・築地にとどまらず、 輸出にも影を落とす。すでに商社の取扱量は半減、先の見通しはさらに暗い。

   当面の復興について末永教授は「まず出漁すること。船の修理、中古船集め、共同利用でもいい。助け合いだ。それと岸壁の整備」という。いずれもいま漁民が求めていることであろう。気仙沼を見てわかった。漁業の復興は東北全体、さらには全国の関連産業に関わる。政府は漁港の再建・再編を東北全域で考えていく方針のようだが、これが近代化、合理化になればいいが。

   それにつけても、原発はつくづく余計なことだった。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2011年4月18日放送「広がる漁業被害 食卓への影響は」)

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