ぼろ雑巾の櫻井翔―泣きじゃくり見るだけで元とれる「神様のカルテ」

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   映画「神様のカルテ」の原作は本屋大賞を受賞した同名小説で、現役医師が書いたベストセラーだ。主人公の内科医・栗原一止を櫻井翔が演じている。舞台は長野県松本市で、緑豊かな田舎町にある24時間365日診療をモットーにした地方病院。栗原も激務に追われてもう5年、ぼろ雑巾状態である。それでも職場では変人扱いされ、うだつが上がらない。心の拠りどころは、大学時代からの親友たちと妻(宮崎あおい)の存在だった。

   そんな栗原が研修先で認められ、大学病院行きを誘われる。同じ頃、さじを投げられた末期がん患者(加賀まりこ)が栗原を頼って来る。治療不能患者の最期を看取るのか、最先端医療を研究に進み医学の発展に貢献するのか、究極の選択を迫られる。

「どう演じていいかわからなかった」

   映画の中の櫻井はいじいじうだうだで動作はトロい。服装や伸ばしっ放しのおばさんパーマがダサい。自分を主張せず、なにを考えてるかさっぱり見当つかない文学オタクの医師。よって、アイドルのスーパードクター物語を期待すると、拍子抜けしてしまう。

   櫻井本人も「どう演じていいかわからなかった」というほど悩み、役作りに頭を抱えたという。たしかに、自分とまったく違う、それも決してなりたくない人物を演じるのはむずかしいだろう。役柄へのとまどいや正解のない役作りへの逡巡が、櫻井の全身から溢れ出していて、役になりきるという点では好演だった。

   それでも納得できないのは、端から成立してなかった二者択一だ。なにしろ栗原は現状維持を絵に描いたような人間。居心地がいいというだけで、大学時代からのおんぼろ住まいを続け、そこの引きこもりやモラトリアム人間とだけ深く付き合っている。それでいて日々の暮らしに忙殺されているのだから、もともと大学病院という新天地に羽ばたく野心も気概も持ち合わせてない。しかも、夏目漱石を愛する義理と人情にしばられた昭和人間。情を取るに決まっている。地域医療に一生を捧げる決意をしたといえば聞こえはいいが、裏をかえせば、進歩や変化を避けて通りたいだけ。そんな男に感情移入しろ、感動しろとせかされても…。

   見どころは、気合入りまくりの加賀の演技。涙腺大刺激、助演女優賞ものの熱演だ。公開初日の成績は上々で、二宮和也の映画「GANTZ」(興収34億5000万円)に次ぐ30億円が見込まれそうだという。まあ、櫻井の泣きじゃくり男泣きシーンを観るだけでも、入場料分の価値はある。

知央

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