超円高時代の中小企業「海外進出」チャンスか荒海か

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   台湾が日本の中小企業をターゲットとした工業用団地の建設を計画していることが明らかとなった。日本の中小企業が持つ高い技術力を呼び込み、台湾の経済発展の原動力にしようという目論みだ。「クローズアップ現代」は円高時代をいかに生き延びるかに苦悩する中小企業の姿を追った。

雇用守るには「出ていくしかない」

「1ドル76円から78円の超円高時代。日本のモノ作りを支えてきた多くの中小企業が呻吟しています。追い打ちをかけるように電力不足問題も生じ、生き残るためには何が必要か。国内よりも安い給与とコスト削減を求めて日本のモノ作りが海外進出を加速させています」

   国谷裕子キャスターは中小企業が置かれている苦境をこう説明し、さらに続ける。

「しかし今、これまで海外進出を躊躇してきた中小企業が海外進出を成功させて、日本の雇用を守ろうと新たな将来像を描き始めています。韓国企業などとの取り引きをきっかけに、世界に販路を確保。収益を増やすことで国内工場での生産や技術開発を進めて雇用を守ろうという動きが始まっています」

   ただ、現実は甘くない。東京・大田区蒲田で町工場を経営す井上忠道さんは、「リーマンショックで1年近い赤字経営が続いた。やっと一息つけるかと思っていたら、今度は円高。従業員の雇用を守るためには海外移転しかない」という。そのための準備に息子を研修会に参加させているが、こんな悩みを抱えている。

「海外に出たら、これまで培ってきた技術をいかにして守るのか。海外に出れば、独自技術漏出のリスクも高くなる。それだけは防ぎたい」

   1000分の1ミリ単位で精巧な金型を作る神奈川県の金型工場は、タイに2人、インドに4人の社員をすでに派遣しているが、現地企業との大口取引契約はまだなく、海外進出の難しさを物語っている。

国内よりも厳しい競争

   ゲストの信州大学経済学部・真壁明夫教授はこう解説する。「海外に出ても、国内よりも厳しい環境の中に置かれます。中国、台湾、韓国などとの価格競争に勝ち残らなければならない。しかも、契約先からはよりシビアなコスト削減が求められる。国内中心なら大手企業からのオーダーもかつてはあったが、それも厳しい状況。はたして、海外に移転して自分たちは生き残れるのか、勝てるのかという問題では大変なリスクがあると思います」

   国谷は「今後、日本のモノ作りのために求められるものは何か」と聞く。

   真壁「国をあげての中小企業の応援です。具体的には外交政策。日本の産業構造は多くの中小企業によって支えられています。その中小企業が海外に進出するなら、相手国に支援態勢をどう求めるのか。政治の手腕が問われています」

   最後に、国谷は一つの問題提起をした。

「中小企業の生き残りと、懸念されている国内産業の空洞化。私たちはどちらを選ばなければならないのでしょうか」

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2011年9月5日放送「超円高に立ち向かえ~海外進出の新戦略~」)

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